仲介人の正体
「あ……嘘……嘘よ……そんな、あああああああっ!!!!」
涙を零しながら絶叫したのは──アメリアだった。
「やっぱり、仲介人はアンタだったか……アメリアさん」
リュクレーヌがうつ伏せたアメリアの前に立ち竦む。
「消去法でアンタだろうとは思っていたんだが、証拠が無くて確信は持てなかった」
患者であるマリーに対して親身になっていた。
そして母親の行動を諫めるような態度。
だが、決定的な証拠は無かった。
「犯人は、同情心から犯行に出た。カレンとマリーの証言を信じて賭けに出たが……やっぱり自ら名乗り出てくれたな」
「そっか……マスカの事知らなかったんだもんね」
同情心を持っての犯行であれば、双子に待ち受ける運命がより過酷で悲惨なものであれば、発狂するのではないか?
それも自らの手でその修羅に彼女たちを誘ったのだ。罪悪感で潰れてしまうだろう。
酷な方法だとは思ったが、決定的な証拠がない以上、手段は選べなかった。
「同情がいつだって正義とは限らないんだよ。アンタのその同情心がファントムに利用されたんだ」
「だって、こうするしか……」
「死なない命はない。命に係わる者なら分かるだろ?」
命の期限を無限にしても、根本は解決しない。
「アンタさ、責任感強くて自分が何とかしなきゃって思ったんだろ?」
「うっ……はい……」
そして、アメリア自身が彼女たちの家庭の問題をどうにかする事などできない。
「それはアンタの仕事じゃねぇよ。例えば……そこのラルファさんとか、警察の仕事だ。そっちに相談すればよかったんだよ」
どうしようもない理不尽は、然るべき場所に縋れば良かったんだ。
とリュクレーヌは続ける。
「アンタのしたことは結果、悲劇に繋がった」
「ううっ……ごめ……ごめん……なざい」
「……けど、最悪なのはアンタの善意を利用した奴だ。アンタもある意味被害者だからな」
同情を利用してアメリアを騙してマスカを作ったファントム。
「他人の同情心は利用するものなんかじゃないんだよ」
そして、わざと、冷たい視線をアマリリスの方に向けて、リュクレーヌは言い放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます