第43話  試験当日

 フォルクスは朝目覚めると皆に体を拭かれていて、息が上がっているのと意識が朦朧としていた。

 皆が必死にフォルクスを看病し、薬師が来て薬を置いていった。


 何故このような状況になっているのかというと、フォルクスが夜中に高熱を出したからだ。

 一緒に添い寝をして貰っていたユリアとソニアが異変に気が付いたのだ。


 かなり異様な状態だった。

 フォルクスは高熱を出し、意識も無く口から泡を噴いていいた。更に失禁までしていたのだ。フォルクスの尿による濡れで2人が目覚めたのが事の始まりだ。


 急ぎ、水で濡らした手拭きを額に当てて熱を下げようとした。皆起こされ、汚れた服を脱がし、身体を拭いていく。失禁していたのと汗まみれの為に寝間着を脱がせ、裸にしていた。よりによって股間は膨らんでいたから女性陣は真っ赤だった。


 リズに至っては


「中々立派なモノを持っているのだな。ひょっとするとべソンのより大きいか?」


 などと言い、べソンがでかいと愕然としていた。


 シーラはリズの頭を叩き叱りつけていた。


「ちょっと、今はふざけている場合じゃないでしょ!」


 何をするにしても、今は体を拭く以外何もできない。体を綺麗にし、ユリア達は着替え、小便の着いた衣服をリズとべソンが昨日の罰として洗いに行っていた。


 皆少し落ち着いてきて、カーラの水魔法で体温を下げていくと、フォルクスの呼吸が少し落ち着いてきた。


 異様だった。かなりの熱で、失禁までしたのだ。意識が一時は無かったのだが、熱を下げていくと何とか目が覚めた。


 朝になり、宿の店主に薬師の場所を教えて貰い、べソンとリズが薬師を半ば拉致する形で強引に連れて来た。


 解熱剤を渡され、原因不明と言われた。対処療法しか思いつかないと言われ、とにかく熱を冷すように言われた。


 薬師が薬を飲まそうとしても失敗した。飲めなかったのだ。薬草を煎じてすり潰し、薬としていた。それをお湯で溶かし飲ませようとしたのだが、中々口に入らない。


 カーラが意を決し


「私がやりますから薬をください」


 薬師からさっと奪い取り、薬を口に含み、口移しでフォルクスの口に押し込んだ。口を塞いだまま強引に飲ませていった。


 薬師は驚いていた


「お嬢ちゃん良くやりましたな。ただ、貴女はすぐに口を濯ぎなさい。女性には毒になりかねない。体温が下がってしまいますから、さあ急いで」


 カーラは慌てて流しでうがいをしていた。

 早くも薬が効いてきたようで、フォルクスの呼吸が落ち着いてきた。

 水をたくさん飲ませなさい、熱が下がらなかったら昼にもう一度薬を飲ませなさいと薬を渡し、汗を出し過ぎて脱水症状を起こし掛けていると伝えて帰っていった。


 ラティスが水を飲ませようとするもやはり飲めなかった。

 ラティス、シーラ、ユリア、ソニア、カーラの順番で口移しで飲ませる事になった。リズもやろうとしたが、シーラに止められた。


「気持ちはありがたいけど、あんたの唇はべソンのでしょ?私達でなんとかなるから」


「なあ、これってひょっとしてあれじゃないのか」


「あれって何よ?」


「ほら誰もが子供の頃にかかるやつさパクチー熱じゃないのか?」


「あっ!ひょっとしてフォルクスって世界から来たって言っているから、今までにかかった事がないのか!それで今頃なの?確かあれって1歳半から3歳の間にかかるのよね?何故今頃なのよ!」


「フォルクスと知り合ってから約1年半だな。この世界に来てから1年半少しが経ったって事だよ。それが全てじゃないか?」


「確かにあのパクチー熱に症状が似ているわね。大丈夫かしら」


「今は熱が下がる事を祈ろう。それよりも誰か魔石を持っているか?俺のはフォルクスの収納の中だぞ」


 とりあえず皆の荷物を鞄から出して、掻き集めるとシーラ達の荷物の中に、テントの中で使っていた魔導具用の魔石が出てきた。とりあえず万が一フォルクスが夕方までに回復しなかった場合は、当初のフォルクスが考えていた作戦を5人でやらなければならない。少なくとも一個は魔石を売らなければならなかったから冷や冷やしたが、とりあえず売れるものが見つかったので一安心していた。


 そうフォルクスはこの世界の者であれば誰もが幼少期に罹る病気に今罹かっていたのだ。


 母親から貰った免疫などの残りの全てが消え失せる頃に発症すると言われている。半年でなく何故か1年半から罹かるようになっている。そうしてフォルクスの看病を皆でして行った。


 そうすると高熱でうなされながらもフォルクスはやがて目が覚めた。体が熱いと唸り、皆が大丈夫か?大丈夫か?と聞いているが水、水をくれ!と訴えるのでカーラが必死に水差しで水を飲ませていた。


 ゼーゼーハーハーと言っており、気持ち悪さからフォルクスは自分が汗まみれだという事だけは分かったので、とりあえずクリーンを掛けていた。


「一体どうなっている?熱い!」


 フォルクスが効聞くのでシーラが伝えた


「あなたは今どうやら子供が罹かる病気に今罹かってしまったようで高熱を出しているの。さっき薬師の方に薬を貰って飲ませたから、今は熱が下がるのを待っているの。少し熱がさがってきたようだから、もう少し横になっていて」


 フォルクスはただ頷く。


 べソンはそんな中敢えて一言言う


「熱を出していて辛いところ悪いが、魔石を出せないか?お前がダウンしていても魔石さえあれば俺達だけでも何とかなる筈だからさ」


 フォルクスは咳き込みながら収納の中にあった魔石の殆どを出した。そして


「ごめん。後を頼む!」 


 なんとか一言いい眠りに落ちるのであった。

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