第41話 試験前日
「あんた達一体何をやってるのよ?」
プルプルと震えているシーラにユリアが説明をした
「あのねシーラちゃん。フォル君って冒険者の掟を知らないのだけれども、どうい事なのかしら?今それを身を持って教えているところなのよ」
「えっ?それってどういう事なの?」
「ちょっと待って、まさかシーラちゃんも知らないの?あのね冒険者たる者、男女同じところで着替え位するものなのよ。その度にいちいち男性が、女性の下着姿を見て反応していたらだめなの。着替えをしている女性の姿を見ても冒険者として活動している時はね、誰かが着替えているな、ふーんそれが何?位にしか思えないようになるしかないの。流石に下着まで外すと反応しちゃうだろうけれども、下着姿を見て反応するようじゃ一流の冒険者にはなれないのよ。あなたたちのみのパーティーだけならい良いけど、他のパーティーと組んだりした時に、他のパーティーの女性の着替えを見て反応していたら喧嘩になるわよ」
「確かにそうね。私達も恥ずかしいから背中を向けてたわね。確かにあんたは私達の着替えを見て慌てて背中を向けていたわよね。ねそれってやっぱり私達に反応していたの?」
「うん、ごめん。君達の着替えを見るとやっぱり男として反応しちゃうんだ。だから背中を向けてたんだけれども、ユリアさんの話だと冒険者としている時に着替えている女性の下着姿を見ても何とも思わないようにならなきゃダメだって聞いたんだよね。まずはユリアさんとソニアさんが僕の前で着替えるから慣れなさいという話になったんだ」
「そ、そう。だったらいいんだけど。そっか。私の小さな胸でもちゃんと女として見てくれていたのね。全くもう、まぎわらしいわね。じゃあ、いつまでもセクシーな決めポーズで下着姿を披露していないで、さっさと着替えなさいよ。着替えたらとっとと食堂に行くわよ。みんなお腹をすかして待ってるんだから」
そうやって食堂に向かっていった。
そして食堂に皆が座ると、ユリアとソニアがお詫びをしだした
「昨晩はごめんなさい。醜態を晒しました。その、皆さんの温かい心遣いに感謝してます。これからも仲間としてよろしくお願いします」
カーラが優しく声を掛ける。
「うん、いいのよ。私達も似たような事があったから。フォルクスさんに救って頂くまではみんな不安定だったの。だから貴女達の気持ちはよく分かるんですよ」
「うん。ありがとう!良かった。嬉しかった。救われたのよ」
そうしてリズ、シーラ、ラティスも問題ない、大丈夫だと2人を励ましていた。その後は黙々と食事をし、ユリアの出勤時間に合わせてギルドに向かう。そう依頼達成の手続きをしていないからだ。
ユリアが気が付いたからだ。
「そういえば依頼達成の手続きが途中で終わってしまっているわね」
サイクロプスの件は貢献度は付かないが、お金だけはちゃんと貰えるし、プラスして提出したオークの討伐証明分は、オークの随時的な駆除依頼というのがあり、それの達成報酬にできると言っていた。報酬の額は大した事はない。それよりもギルドに対する貢献度がカウントアップされ、ギルドでのランクが上がる可能性が高くなってくる事の方が大事な事であった。また、今日か明日にお金を取りに行くから、後回しで良いと伝え、ギルドを引き上げる。
ギルドでの用事も終わり、この後の事をフォルクスは考えていた。明日の2次試験の課題提出に備えて本来であれば休む所ではあるが、フォルクス達はこの街をあまりにも知らなさ過ぎた。特にフォルクスとべソンは街に着いた翌日には試験と街を見る余裕は無かった。
ソニアもそうだ。街に着いてから直ぐに試験だったらしい。急に試験を受けろと言われ、里から送り出されたのだと。
その為に今日と明日の試験までの間は、街のあちこちをみて回りどんな街なのかを把握する日に充てる事にしようと決めた。
そうしてギルドを出た後にフォルクスがその旨を話すと、
「じゃあ、そういう事で!夕飯の時間には多分宿に戻るから」
等と言ってべソンとリズは早々に消えてしまった。あっと言う間の事で、声を掛ける間もなく消え失せたのだ。
シーラ等はクスクス笑っていたが、笑えないのはフォルクスだけだった。まったくもうあいつらときたら!そんな感じであった。
「ギルドの前でぶーたれていてもしゃーないな。5人で街を回るか。なあ、君達は僕より先にこの街に来ていたよね?少しは地理が分かっているのかな?」
ラティスが手を上げ
「主要な所はある程度分かりますよ!ただ、美味しいお店等はシーラの方が詳しいと思いますよ」
まずはラティスに主要な場所を案内して貰った。劇場、行政府、歓楽街、騎士の詰め所を回り、武器、防具、道具、冒険者向けの服、おしゃれな服、日用品、これらを売っていそうな店を手分けして探してみて、行きつけの店を確保する感じになった。
後でべソンとリズにはお仕置きが待っているが、取り敢えずこれから色々な買い物をするのに困らないようにした。
また、夕方になり、ソニアのパーティー登録をしていなかったとラティスが気が付き、慌ててユリアを訪ねた。ソニアの冒険者ランクはラティスと同じだった。ユリアはまだオークの随時依頼の手続きをしていなかったので、これ幸いにとソニアとついでにユリアもパーティーに入れた。
そして規定によりユリア、ソニア、ラティスがランクEに上げて貰った。
お金は15万Gとごく普通だったので、フォルクスの計らいでパーティーに1万G、残りは女性陣に各2万を渡した。ユリアは遠慮したが、一応冒険者として外に出る事もあるから、冒険者用の服を買う為の必要経費として無理やり渡していた。
そうやって手続きが終わり、ギルドの業務終了時間間際に来ていたので、ユリアの本日の最後の仕事だった為、着替えるのを待ってから一緒に宿へ向かうのであった。
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