第27話 奴隷商
奴隷商といっても貴族の邸宅のような立派な屋敷に商会が有り、一見すると奴隷商とは分からないただの屋敷である。奴隷商会というのは表札からしか判断できないのだ。
建物の正面入り口を見ると何人かの者が入り口に並んでいるのが分かった。それが有るからだろう、初夜権を売られた者で買い取って貰う者を連れて来た場合だが、彼女達は予め裏口に行くように言われていた。その為、単なる通行人の振りをして建物の裏口の方に回った。
裏口には誰もいなかったが、裏口の扉付近にある呼鈴を鳴らし職員を呼ぶ。
そう、彼女達は権利が店頭で売られる当日、自らが希望する者に権利を買って貰う権利が有るので、その者を店が開く前に連れて来なければならない。そういう者が見付からない者は、奴隷商の店頭に並んだ権利書を見も知らぬ誰かが買っていくようになるのだという。店がオープンした時点で並んでいる者で抽選らしい。そうしないと、数日前から並ばれて迷惑になるからと、いつの頃からか分からないが抽選にしているのだ。
奴隷商の主は彼女達が連れて来た者があまりにも若いので多少は驚いてはいたが、それでも礼節を持って対応し、応接室に通された。
商会主はけばけばしい燕尾服を着た中年のでっぷりとした奴であった。
「ようこそハイランド商会へ。当商会の商会主のハイランド二世でございます。今このようにして彼女達と一緒に来られたのだという事は、お二方が彼女達の権利を、それも彼女達の求めに応じて購入されるという事で宜しかったでしょうか?」
フォルクスは毅然とした態度で挑む事にしていて、話す内容は皆に説明している。虚勢を張るから少し演技が入ると行ってある。そう、舐められまいと虚勢を張るに過ぎない。今からは演技なのだ。勿論奴隷商には看破されるとフォルクスは思っている。
「俺がフォルクスで、こっちがべソンだ。べソンが一番背の高い子、リズの所有権を買い、あとの3人は俺が買う。金はちゃんと持って来ているから確認してくれ。3人同時に買うが問題ないよな?」
「はい、お金さえきちんと頂き、彼女達の方からの同意を私自らが聴き取れれば問題ございませぬ。」
というので4人が各々べソン、フォルクスに権利の買い取りをして貰いたい旨を申告した。
「分かりました。初夜権の行使はどうされますか?3人はまだ少なくともまだ13歳ですので権利の行使が出来るまでまだ年数が掛かりますが、このラティス嬢は本日15歳になっておりますので、今からでも権利の行使ができますがどうされますか?」
「いや、この4人には十八歳まで権利を行使するのを猶予するものとし、買戻しは購入価格での買い戻しを許可するんだ。出来るよな?」
「正気でございますか?」
「正気じゃないように見えるのか?彼女達は物じゃないんだ、心のあるか弱き女性だ。そんな彼女達に救いの手を差し伸べるのは異常か?」
「これは失礼致しました。私の知る限りというよりも、私が奴隷商になりまして、家族以外が買われるのを除き、このように女性に有利な条件で権利を設定される方を初めて見ました」
「うん、俺達は彼女達が好きだから買い戻しが出来るチャンスを与えたい。彼女達も俺達を好きだと言ってくれている。俺達も男だからね、女性の体には興味もあり性的にも触りたいし、何よりエッチな事をしたいさ。だけれどもな、彼女達とはできれば初夜権を使わずに肌を重ねる間柄になりたいとは思う。奴隷商の前で言うのもなんだが、俺はこんな権利など使わなくても女性と恋仲に落ち、その女性と愛し合える、そういう自信があるんだ。だからこんな権利を使うなんて情けない真似はできない。あんな自力で女性を口説けないクズ共と一緒にしないでくれ」
「なる程。確かにハンサムボーイでございますな。分かりましたが一応確認しておきますが、万が一ですが、彼女達が買い戻しが出来なかった場合、貴方はここで私を始め、何人かの者が見ておる前で彼女達を抱かなければなりませんが、それはお分かりでしょうか?それを拒否される場合二人共に死に至りますぞ」
「ああ、分かっている。分かった上で権利を買い取るんだ。その場合、俺も死にたくないから、覚悟を決めて皆の前でまぐわって見せるさ。だがな、俺達は独占欲が強いから彼女達の肌は自分達以外に見せる気はない。ちゃんと稼がせ、買い戻しをさせてからふたりきりで愛し合うと宣言してやる。残念だが、主よ、彼女達の裸は拝めないぞ」
「分かりましてございます。一応奴隷商と致しましては告知義務がございますので説明をさせて頂いた次第です」
「そうだろうな。ところで彼女達がお金を自力で用意できたとして、その場合の買い戻しはどうすればいいんだ?」
「はい。それはわざわざこちらにお越しい頂く事なく宣言をすれば良いのでございます。勿論お越し頂いても構いません。まず権利を持ちの方が、確かに買い戻しのお金を受け取った旨を言うか念じます。すると一度首輪が光ります。次に女性側が所有権の買い戻しが完了した旨を言葉に出すか念じるると2度首輪が光り、所有権は消えます。女性の方が最後に首輪よさらば!か、その類の言葉を発するか念じますと首輪が割れて外れます。そういう作りになっております。但し、心の中で自力で揃えたお金でないというような思いが少しでも、男女どちらかに有れば首輪は外れません。ですので己の心が嘘だと認識していては無理ですので、くれぐれもご注意願います」
「分かった。ところで外に並んでいる者達はどういう人なんだい?」
「はい。今日は今月の初夜権の売り出し日でございまして、何故か今月売りに出される者が皆かなり見目麗しい者達だと噂が出ておりまして、彼女達の権利を買う為にああして並んでおる次第であります。尤も貴方様方が今日売り出しのうち特に事前評価の高い4人の権利を買われますし、この4人を目当てに来ている者が半分はいると思いますから、あの者達は無駄足を踏み、事実を知ると血眼になり飼い主は誰だ!誰か教えろと騒ぎ立てるでしょうな」
「で、あんたはどうするんだ?」
「ほほほ。このようなアコギな商売でも信用第一ですから、誰がお買い上げになられたのかを伝える事は有りませんよ。但し、煽りはします」
「どんなふうに?」
「早く探しませんと初夜権を使われますよ。と」
「因みに権利を持っていると分かった場合、ここに来なくても権利の移譲はできるのか?」
「はい。首輪に二人が触れながら宣言を口にするか念じれば可能でございます。無理矢理ではなく、それに見合った対価を双方が納得されていればですがな。脅しや人質と引き換えでは心が否定しますから不可でございます。穏便にならば可能でございます。勿論仲介料を頂ければ当方にて間に入らせて貰います」
「分かった。知りたい事はまぁまぁ聞けたかな。あまり時間がないから、とっとと販売と手続きをやって欲しい」
そうして購入手続きに入るのであった。
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