いちまんえんさつ

@taketake464111165259

第1話

今からちょうど、20年ほど前の話。

私はトラックの人材派遣会社、誰かが休むと代わりに走り仕事のない日は夕方から朝方までタクシーに乗ると、二足草鞋を履いておりました。

その日は忘年会シーズンの真っ只中!タクシーの仕事は年に一度の大量水揚げ!

それこそ他の日の倍!稼げました。

その日も金曜日、トラックの仕事もなく、16時に体調も万全で京都山科のタクシー会社を出庫しました。出庫するなり無線も鳴りっぱなしで二万円のいつも1日がかりで稼ぐ水揚げも突破、そろそろ木屋町、祇園の呑んだ後のお客さんを探しに21時。木屋町通りを流していると早速後部ドアをコンコン、勢いよくドアを開けて50代のオジサン、当然お客さん。

「すんません、洛北まで行ってもらえますか?」「どうぞ」「洛北高校まででよろしいですか?河原町上がって下鴨本通りをずっと北へいきますね」「ちがうちがう!ずーっと北やで笑」

なんと洛北町まで!私は行ったこともなく場所は大体わかっていたけど、この時間からの幸運!料金メーターも八千円くらい?しかもお客さんもニコニコ!私たち、一番嬉しいのは稼げるお客さんなんだけど僕には笑顔で接してくれて道中を楽しく仕事させてくれるお客さんが一番大好き!もちろん喜んでお供させていただぎした。

楽しい時間はあっという間にすぎ、無事お客さんを送り届けられお別れの時間。

「運転手さん、楽しかったわ。またよろしくお願いします。お釣りはとっといて!」一万円札をすっとおいて颯爽と降りていかれた。「ありがとうございましたっ」私もいい気分で雪が少しのこる山道を繁華街へと急ぎました。あんなことがおこるともしらずに、、、。


山道を出て市街へと向かう道に抜けた時、対向車線でこっちをみながら手を挙げるのは10代から20代の髪はショートの女性。祇園に急ぎたくはあったがなぜかしらそのお客さんが気になり、「あーもーしゃあないなー」と思いながらUターン。お客さんの横に止まった。

「どちらまで?」「この道を真っ直ぐ道なりに行って下さい。」「わかりました。」

女の子やし、なんかしゃべらんと怖いかな?

と私は天気の事や私の子供達の事など、少し気を遣いながら話しかけてみた。しかし彼女はうんともすんとも言わない。

あんまり話してセクハラとか思われたら大変だ、、。と私は黙って車を走らせた。沈黙の中一つ目の集落を通り過ぎる。彼女も私も黙ったまま。二つ目の集落を越えた所でお客さんがやっと口を開いた。「集落を抜けたところにバスの回転する所があるのでそこで降ろして下さい」「わかりました。料金は2320円になります。」「あ、お釣りは結構です。」

と一万円札を料金置きに置いて、ドアを開けた覚えもないのにドアがスッと開いて降りていかれた、、。

「お客さん!一万円はもらいすぎやで!ちょっと待って!」私は千円札7枚を用意しながら前に止めてあったミニバンの助手席へ行きコンコンと窓を叩いた。窓はペンキで塗られたように真っ黒で外からは見えない。反応もない。助手席横から前部に回ってみた。右側の窓の4分の1はペンキで塗られたように黒くなっていたが助手席にはさっき私のタクシーに乗っていたはずの女性が首を何かで裂かれ目を開けたまま、コト切れていた。

運転席にもやはり目を開けたまま、男性がこちらを睨んでいた。

私はすぐに警察を呼び事と次第をその場で事情聴取され、もう帰っていいと言われた。その日は仕事もやる気がおきず、会社に事情を説明して帰った。


警察から殺人事件の事は誰にも言わないようにと要請があった。私にも警察との係りはごめん被りたいと思いかあるから素直に要請に応じた。新聞やテレビにも出なかった事件の一つかもしれないが、何故彼女が殺されたのか?確かに知りたいところである。

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