#782

――ラムブリオンの前で、放心状態のまま地面に腰をついているブレイク。


そんな彼を哀れそうに見ているラムブリオンの姿が消えていく。


そして、再びブレイクの妹――クリーン·ベルサウンドの姿が現れる。


「兄様……。もう、いいのですよ」


先ほどのラムブリオンとは違い、打ちのめされた兄をなぐめるクリーン。


彼女がそう言うと、その隣にもう一人の人物の姿が出て来る。


それは、パーマがかった長髪でガッチリとした体格の中年の男――ハザードクラス、非属ノン ジーナスの二つ名で知られるロウル·リンギングだった。


「クリーンの言う通りだ。お前はよくやったよ」


ロウルはクリーンと同じくおだやかな顔で声をかけてくる。


もういい、本当に本当にこれまでよくやった。


罪を背負い、それに押し潰されないように奮闘ふんとうし、妹のため、仲間のため、世界のためにお前は頑張った。


生まれ持った才能にあぐらを掻くこともなく、己を鍛え、そして戦い続けてきた。


誰にでもできることではない。


それは、たとえ英雄と呼ばれた母――クリア·ベルサウンドでも成しえなかっただろうと、クリーンとロウルは優しくブレイクへと言った。


「クリーン……。ロウルのおっさん……」


ブレイクは焦点の合わない目で二人を見ていると、そこに二人の男女がゆっくりと実体化していた。


それは、ロウルにも負けないくらい良い体格をした白髪の男ブレイブ·ベルサウンドと、着物姿の女性クリーン·ベルサウンドだった。


「頑張ったなブレイク」


「お前は私たちの自慢の息子ですよ」


「親父……お袋も……」


父と母が目の前に現れ、二人もブレイクに優しく声をかけてくる。


それから母クリアと同じ着物姿の老婆も現れる。


ばあちゃん……」


「ブレイク……。立派な子に育って……私はお前のことを誇りに思います」


老婆の名はイノセン·スィックライスフィールド――。


クリアの母で、ブレイクとクリーンの祖母であり、二人の育ての親だ。


イノセンは微笑むと、そっと地面に腰を下ろしているブレイクへと手を差し伸べる。


放心状態のブレイクだったが、それが紛れまなく自分を救ってくれるものだと思った。


自分を肯定してくれる――。


ねぎらってくれる――。


これまでのことを称賛しょうさんしてくれる者たちの暖かさに、彼はもうそれ以上のことはもう考えられなくなっていた。


(もう……いいよな……)


震える手を上げて、祖母の手を掴もうとするブレイク。


だが、そのときに――。


突然彼の額を、一筋の閃光が貫いた。

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