番外編 自分たちのために
――オルタナティブ·オーダーのすべての戦力を集め、いつでもストリング帝国を襲撃できる地点に集めていたライティング。
だが彼は今、その本隊と離れていた。
トランスクライブとメモライズ共に、すでに帝国の本拠地である陸上戦艦ボブレンの近くまで来ていたのだ。
「どうやらあのジャズの動画の影響で、他の国の援軍は期待できそうにないな」
通信機器を耳から外し、トランスクライブがライティングにそう伝えた。
その隣では、彼と同じく通信機器を耳に付けていたメモライズが、二人のほうを見て、その赤毛頭を揺らしながら首を左右に振っている。
どうやらどの国も、オルタナティブ·オーダーと帝国の戦いには参加しないことを決めたようだ。
それは、サーベイランスが作成し、メディスンによって編集された動画による効果だった。
電子ネットワークを使って、世界中にばら
それは、ライティングたちも、そして帝国側――ローズたちも考えていなかったほどの影響を各国に与えた。
そうなると、当然互いの総力戦になる。
だが、ライティングは迷っていた。
他の国の応援がなければ、明らかに物量で
勝ちの目の薄い戦いに、若い兵やまだ子供である者たちを巻き込んでも良いものかと。
それに、前述のジャズの動画によって、世界の混乱は終息に向かっている。
帝国にもう手を貸す国はもう現れない。
むしろ、まだ帝国が武力行使を続けるのなら、各国が一丸となって反抗するだろう。
元々帝国は、各国が争いを始めたから動いていたのだ。
その大義名分もなしに、戦おうとするなど自滅するだけ。
そういう意味では、すでにオルタナティブ·オーダーの存在は必要ない状況だった。
考え込むライティングへ、トランスクライブが声をかける。
「なあ、ライティング。メモライズと話したんだが……」
トランスクライブはそう言いながらメモライズのほうを
もうオルタナティブ·オーダーも世界も関係ない。
ただ帝国に捕まっているリーディンを――仲間たちを救うおう。
彼がそう言うと、メモライズも口を開く。
「そうだよライティング! 他の国だって帝国が武力行使を止めたら何もしてくれない! だったらウチらでやるしかないじゃないッ!」
声を張り上げたメモライズの肩に手をやり、彼女を落ち着かせ、トランスクライブが言う。
「お前の考えはわかってるぜ。どうせ他の連中を巻き込めないなんて思ってんだろ? それはいい。わざわざ死なせるようなもんだもんな。……でもよ、オレとメモライズは最後までお前に付き合う覚悟だ」
「ウチらは仲間でしょ家族でしょッ!? だったらそれを取り戻すために戦わなきゃだよッ!」
「トランスクライブ……メモライズも……」
ライティングは笑みを浮かべながら
そのときの笑顔は、いつも見せる彼の
(……ノピア将軍、すみません。ボクは……あなたが望むような人間にはなれなかった……)
恩人であるノピア·ラシックに
それは、ただ単に悲しいとか、情けないとかいうものではなく。
複雑な感情が入り交じった涙だった。
ライティングは涙を
「あぁ、やろう。仲間のために……そしてボクたちのために……」
穏やかな笑みを浮かべて言うライティング。
そんな彼を見て、トランスクライブとメモライズも微笑んでいた。
「その戦い……私も参加します」
そこへ一人の少女が現れた。
その少女はハザードクラス、
ウェディングはライティングたちに言葉を続ける。
「私もリーディンさんを救うために行きます」
「だけど、これはもう私闘みたいなものだよ。君まで巻き込めない……」
ライティングがそう言うと、ウェディングは彼に近づいていく。
「言い忘れてました……。私はリーディンさんを救うためだけではなく、クリーンの
そう言ったウェディングの表情は怒りに満ち
今の彼女は、むしろライティングたち以上に、個人的な恨みに突き動かされている。
「いいですよね? ライティングさん、トランスクライブさん、メモライズさん。私も一緒に行かせてください」
ライティングたちは、そんな彼女の覚悟を受け取ったのか。
生きては帰れない可能性が高いと言いながらも、ウェディングの同行を許可した。
「これでこちらは四人と……。後はラムズヘッドが回してくれたドローン隊のみ……。この戦力で必ずリーディンたちを、仲間を家族を救出するッ!」
ライティングは自らを
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