#726

「それにしても暗いね~。なんかお化けでも出そうな雰囲気だよ~」


「お化けか。まあ、似たような力がここには集まっているからな」


「えッ? ねえ、ブレイク君。私ってばそういう超常現象オカルトチックなのは苦手なんだけど~。そりゃ喋る猫とかに精神攻撃されたりとか、テレパシーなんて非科学的なことも体験しているけどさ~」


洞窟内にブライダルの間の抜けた声が響くと、一人の男が彼女たちの前に現れた。


顔立ちの整った長身の青年――。


ブレイクと同じくバイオニクス共和国からハザードクラス選ばれた――還元法リダクション メゾットの二つ名で知られるラヴヘイトだ。


「ラヴヘイトッ! あなたもよく無事で……」


ジャズが笑みを浮かべると、ラヴヘイトもまたその口角を上げていた。


そして、彼はブレイクを見ると声をかける。


「黙って出て行ったと思ったら、こういうことかよ」


「留守番ご苦労。待たせたが、これから奴のところへ行こうと思う」


ブレイクが返事をすると、ラヴヘイトはとりあえず奥に進むようと皆に言った。


彼に言われるがまま歩いて行くと、ランプや照明が多く設置された天井の高い場所へと辿り着く。


ジャズは、そこに座っている女性二人を見て駆け寄る。


「ミウムッ! それにメイカ……メイカ·オパールもッ!」


そこには、白銀髪で金属の腕を持つ女性――ミウム·グラッドストーンと、ショートカットの隻眼せきがんの女性――メイカ·オパールがいた。


ミウムは振り向くことなく、胡坐の姿勢で地面に腰を下ろしていた。


その両手は腰と同じく地面につけており、反応がないところを見るに、何かに集中している様子だった。


彼女とは反対に、メイカのほうはジャズたちを眺めてほうけている。


口をだらしなく開け、まるで誰だとでも言いたそうな顔だ。


ジャズはそんなメイカに声をかける。


「ほらあたしだよ。そんなふざけたマネしないでなんとか言ったらどうなの?」


メイカの両肩に両手を乗せたジャズ。


だが、メイカはまだ誰かわかっていなさそうだった。


そんな態度に、いい加減にしびれを切らしたジャズが声を張り上ると、突然彼女は泣き出してしまう。


まるで子供のようにうわんうわん喚き出したメイカに、ジャズは戸惑いを隠せずにいた。


「どうしたんだよッ!? なんであたしがわからないのッ!?」


「やめてやってくれ。今のメイカにはお前のことがわからねぇんだよ」


「え……? それって……一体どういうことなのッ!?」


声をかけてきたラヴヘイトに、ジャズが訊ねた。


だが、彼女は気が付く。


「まさか……。神具の呪い……なの……?」

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