#705

――宮殿内にある部屋を借りていたサーベイランスは、多くの人を集めて話をしていた。


それは現在の世界情勢ついてだ。


止まらぬ大災害と文明の利器に取りく黒い光の化け物――エレメント·ガーディアン――。


その混乱に乗じて我先にと武力抗争をし始めた各国――。


さらには、その世界戦争の中心にいるストリング帝国とオルタナティブ·オーダーの争いと――。


サーベイランスは、この国に住んでいる者たちが何を感じ、そして何を思うかを訊ねていた。


そして、それらの話を聞くことで、この国の現状を知っていく。


「ではこの国は、帝国ともオルタナティブ·オーダーとも同盟に近い関係なのだな」


サーベイランスがそう訊くと、皆がうなづく。


どうやらリュージュ女王は、両勢力の間でうまく立ち回っているようだ。


それからさらに細かい話をしていると――。


「失礼~。邪魔はしないからここにいさせてよ」


何かドッと肩を落としたブライダルが部屋に入ってくる。


サーベイランスは彼女の様子を見て気が付く。


(……誰かに負けたのか。しかし、こんな平和な国に、ブライダルを負かすような人間がいるとは思えないが…… )


サーベイランスは考える。


たとえ敗れたとして――。


勝ち負けにこだわらないブライダルをここまで落ち込ませる理由がわからない。


この自称キュートでセクシー傭兵は、何があっても笑い飛ばすだけの胆力の持ち主だ。


そんな彼女の気力をここまでけずるとは――。


あくまでブライダルの様子からの想像でしかないが。


サーベイランスは彼女に勝ったと思われる人物に興味を持っていた。


彼が考え込んでいると集まっていた者たちが、どうしたのかと訊ねてくる。


「いや、なんでもない。話を続けよう」


それからサーベイランスと集まった者たちの話は続いた。


ブライダルは傍にいながらも何も喋ることなく、ただ覇気なく聞いているだけだった。


「今日はこれくらいにしよう。わざわざ来てもらって悪かった。よかったらまた話を聞かせてくれ」


そして話が終わり、サーベイランスが皆に礼をいうと、全員部屋からが出て行く。


残ったサーベイランスとブライダル。


ブライダルが機械人形に声をかける。


「ねえあんた、何を考えてんの?」


「この国、オルゴー王国はすでにガタガタだ。一見平和だが、その実はもう修復が難しいほど崩壊している。王女であるレジーナ·オルゴーが反乱を起こしていることがそれを証明しているだろう」


「まどろっこしい言い方するね~。つまりどういうことよ?」


サーベイランスの遠回しな説明に、ブライダルが首をかしげて、再び訊ねた。


すると、サーベイランスはここに集まった者たちの名前を整理し始める。


身体に内蔵していたデバイスから宙に映像を現し、一人一人の顔とこの国での立場を眺めてそれらをフォルダ別に分けていく。


「そうだな。お前には伝えておこう。私は――」

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