#700

それを見たジャズは身を乗り出し、戦う意思がないことを訴える。


「待ってッ!? あたしは別にあなたと戦いたいわけじゃッ!」


「いきなり邪魔されればこうもなる……。まったく、だから関わるなと言ったんだ……」


「わかってたなら止めてよッ!」


「いや、何度も止めたんだが……。お前……私が出会った頃よりもバカになってないか?」


いきなり邪魔に入っただけでなく、目の前でまるで漫才のような会話を繰り広げるジャズとサーベイランスを見たレジーナは、その身を震わせていた。


そして、手にしていたガンブレードをジャズに突きつけると、彼女に決闘を申し込む。


「おい、下げ髪の娘。止めたいのなら私と勝負しろ」


レジーナの申し出にジャズはキョトンとほうけると、彼女に訊ねる。


「下げ髪ってなに?」


「平たく言えばポニーテールのことだ」


「なに!? あたしの髪型はポニーじゃないぞ! これはサイドテール! 一緒にしてもらっちゃ困るんだよ!」


「私に言うな……」


レジーナは、再び漫才のような会話をしたジャズとサーベイランスを見て憤慨ふんがいした。


それは、彼女の周りにいた兵たちが皆青ざめるほどものだった。


レジーナは、王女らしかぬ歪んだ表情で、ジャズに向かって叫ぶ。


「ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……。もはや承諾はいらん。この場で斬って捨ててくれる!」


「ちょっと!? だからあたしはあなたと戦いたくないって言ってるでしょッ!?」


「問答無用ぉぉぉおッ!」


レジーナがガンブレードで斬りかかる。


ジャズはそれを避けて後方へと下がると、レジーナはガンブレードの握りを変え、本来剣のつばがある位置から伸びた銃口――そこから弾丸を発射。


離れたジャズを逃さまいと、ガンブレードを撃ち続ける。


「どうする? 相手はもう戦うつもりのようだが?」


レジーナの撃った銃弾を避けるために、反重力装置アンチグラビティで宙へと飛んでいるサーベイランスがジャズへと訊ねた。


その皮肉の交じった言い方にジャズは表情を強張らせる。


「しょうがない……。効果装置エフェクトッ!」


普通の人間がマシーナリーウイルスの適合者と同じ力を得るための腕輪バングル――効果装置エフェクト


ジャズは、使用することで皮膚の表面を機械で覆い、身体能力を上げる装置のスイッチを入れた。


白い鎧甲冑のような装甲が彼女の右腕を覆い始め、彼女は身構える。


「機械装甲だと? もしやお前、あのアン·テネシーグレッチの再来と言われている少女――ジャズ·スクワイアか?」


「そうだけど……。それがどうしたの?」


ジャズが答えると、レジーナは肩を揺らし始めた。


そして、ガンブレードを構え直す。


「くくく、面白い。これは私の実力を試すのに絶好の相手だ」


「試す? あなた……一体何を言っているの?」


「改めて名乗らせてもらおう。私はオルゴー王国の王女レジーナ·オルゴー。いざ尋常に勝負ッ!」

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