#563

メイカの叫び声を聞いて動ける者はすぐに立ち上がった。


そして、再び押さえつけようと向かうが、イードが両手を大きく広げて円を描くように回すと、棚田たなだの上空に巨大な光球が現れる。


それはまるで太陽のように輝き、イードが両手を振り落とすと、そのまま地面へと落下。


このままでは全員あの光に飲み込まれて全滅してしまうと思われたが――。


「全員下がってろッ! あれは俺が止めるッ!」


ロウルが神具――処女ヴァージンに跨り、上空へと飛んでいく。


それから彼はあろうことか、その巨大な光球を受け止めた。


その身が焼け、まず皮膚が焦げてやがて身体に流れる血液さえも蒸発し、血煙を立てていった。


「ロウルさんッ!?」


メイカが手助けしようと体内のオーラをコントロールして浮かび上がったが、彼女がロウルのもとへ辿り着く前に光球が破裂。


その後は、破裂した光球の欠片がまるで無数の隕石のように降り注ぎ、ミックスたちを襲う。


メイカはその光を避けながら、全身に大火傷を負ったロウルを抱えると、掌からオーラを注いで彼の傷を癒していた。


一方で、ジェットパックで飛んでいたソウルミューは光を避けきれずに地面へと落下。


ミックスはジャズを守ろうと彼女の盾となっていた。


光りが降り注ぐ中、イードはロウルを抱えて空から降りてきたメイカと対峙。


構えてから拳を強く握ると、その両手から光を放つ。


メイカはロウルを地面に寝かすと、イードに合わせるように同じ構えをとった。


伝承法ユーズ トラディションか……。どうやらお前がマスター·クオのすべてを受け継いでいるのは真実のようだ」


「ええ、そうよ。だからあたしは……マスター·メイカを名乗るッ!」


先に仕掛けたのはメイカ。


迸る光の波動を放ち、イードの動きを止めようとした。


だが、やはり同門というべきか。


イードも彼女と同じ構えから波動を放ち返す。


「疲労は隠せんようだな。やはりまだ未熟」


その波動の撃ち合いはメイカが負けたが、彼女は光の障壁で放たれた波動をガード。


だがイードが飛び込んできて、彼女の光の障壁を拳で破壊する。


「未熟なのは百も承知。あたしはあんたとオーラの勝負をしているわけじゃないッ!」


破壊されたメイカの光の障壁が、バラバラの破片となってイードの周りを覆い尽くした。


まるで花びらのような光を払いながら、イードがメイカに向かっていくと――。


「さあ、どれが本物だと思う?」


何人ものメイカが彼を囲っていた。


突然集団となったメイカたちは一斉に光の縄を作り、イードへと放つ。


全身を拘束されたイードだったが、取り込んだ神具の力を発動。


まずは地面が輝き始め、その光の衝撃で複数になったメイカを一斉に排除し、それで残った本物のメイカを捉える。


それからいつの間にか手に現れた湾曲した刀身で先端が二股に分かれている剣――聖剣ズルフィカールを投げつける。


「神具の力ッ!? マズいッ!?」


メイカは慌てて光の障壁を出して剣を弾いたが、次の瞬間に彼女の喉元は、イードの手によって吊し上げられた。


喉を握りつぶされて呼吸がままならないメイカに、イードは言う。


「お前はどうして神具を使わない? いや、ひょっとして使えないのか?」


「やめろぉぉぉッ!!」


イードがメイカに声をかけると、そこへミックスが飛び込んできた。


ミックスはメイカを掴んでいたイードの手を蹴り上げると、その顔面に機械化した拳――装甲アーマードでぶん殴る。


その凄まじい一撃で後退させられたイードは、ミックスのことを見据える。


「まだやるか……」


「やらなきゃみんな死んじゃうんだろっ!? ならやるしかないじゃないかッ!!」


すでに多くの仲間が倒れているというのに、全く戦意を失っていないミックス。


そんな少年の姿を見たイードは、悲しそうな表情でその口を開いた。

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