#538

メゾンマルジェラが手を振ると、岩のような大男――ロダルテがゆっくりとジャズたちのほうへと歩き始める。


ロダルテの両手はメイカと同じく白い光が現れていた。


それを見たジャズはメイカのほうを見ると、彼女へ言う。


「ねえ、あなたってさ。もしかして元永遠なる破滅エターナル ルーインの信者だったとか?」


「んなわけないでしょ。あいつらがあたしの故郷の技を盗んだのよ」


「あ、そう。ミックス、メディスンさんに連絡は?」


ジャズは愛想なくメイカに返事をするとミックスに声をかけた。


だが、ミックスはまだ電話をしていてジャズのほうを見ながらエレクトロフォンに向かって喋っている。


それを見たジャズは顔をしかめると、インストガンを構えてロダルテにその銃口を向ける。


「連絡くらいさっさと済ませなさいよ」


そして、インストガンから電磁波を連射。


夜の街に轟音が鳴り響き、その閃光が輝いて周囲を照らす。


だが、ロダルテはその光を纏った手で電磁波を弾きながら向かって来る。


「近代科学に限界を感じるわ……」


「銃なんかじゃ法衣ゴリラの弟子はやれないよ。退いて、あんたじゃ無理」


メイカはそう言うとロダルテへと飛び掛かった。


その光を纏った拳を振り上げ、ロダルテの身体へと叩き込む。


岩のような巨体がメゾンマルジェラへと吹き飛んでいったが、彼女もメイカと同じく光を纏った手で飛んできたロダルテを振り払った。


「それなりにやるようね。だけど、私はイード様に必ず神具を届ける」


メゾンマルジェラはフンッと鼻を鳴らすと、振り払って路上駐車していた車に突っ込んだロダルテに指示を出す。


「ロダルテ、いつまで寝てるの? ここは私がやるからあなたは残りの神具を取ってきなさい


ロダルテは身体を起こすと、まるで何事もなかったかのように駆け出していった。


それを見たロウルは、神具――処女ヴァージンを呼び出した。


何もない空間から現れた漆黒のバイク、処女ヴァージンに跨がり、走り出したロダルテを追って飛んでいく。


「あのデカイのは俺が止める。こっちはお前らに任せるぞ」


処女ヴァージンに乗って空を飛んで追うロウルを見たジャズは、ようやくエレクトロフォンをしまったミックスに言う。


「ミックスもあいつを追って」


「でもジャズッ! あの顔色の悪い女の人、かなり強そうだよ!」


「いいからッ! 言うことを聞きなさいッ!」


「はいぃぃぃッ!」


ジャズに怒鳴られたミックスは、両足を機械化――装甲アーマードさせると跳躍。


ロダルテを追うロウルの後へと続いた。


「お~こわッ。そんな態度じゃそのうちあんたから逃げちゃうんじゃないの、あの子」


「こんなときに茶化すなッ! それよりもあなたは神具を抱えて隠れてなさいよ!」


「冗談言わないで。あたしはまだ拳で語ってない」


身構える二人を見たメゾンマルジェラは、その光を纏った手をそっと前に突き出した。

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