#492

突然現れたミックスは、少女が放つ無数の光球からジャズを守る。


「ジャズッ! 今のうちにやっちゃってッ!」


「やっちゃってってあんた……」


ジャズは、叫ぶミックスに少し呆れながらもインストガンの照準を少女の足に合わせた。


今少女は目の前にいるミックスに釘付けになっている状態だ。


これなら避けられない。


そして、電磁波を発射。


見事に少女の足に当たり、彼女は身を震わせながらその場にバタンッと倒れる。


光球を操る少女を無力化し、安心したミックスは両腕の機械化を解いてジャズに駆け寄った。


「ジャズ! その傷、大丈夫なのッ!?」


「見た目は派手だけど、傷自体は大したことないよ。というかあんた、アミノさんたちとは会えたの?」


「いや、学校のほうにはいなかったから」


それからミックスは自分のところにも特殊能力者の子どもたちが現れたこと――。


アミノやクラスメイトたちとは見つけられなかったこと――


そして、ジャズの双子の弟であるジャガーに助けられたことなどを話した。


「そう……。アミノさんたちは見つけられなかったんだ」


「うん……。だけど、ジャズを助けられてよかったよ。危ないとこだったみたいだしね」


「べ、別に、これくらいあたし一人でなんとかできたよッ! あんたの助けなんか必要なかったんだから!」


ジャズは膨れっ面でそう言うと、軍服に付いたポケットから薬や包帯を出し、傷の手当てをし出す。


ミックスはそんな彼女に向かって、普段の乾いた笑みを見せるだけだった。


「で、でも……助けに来てくれてありがとぉ……」


「えッ? なにジャズ?」


「うっさい! いいから手当を手伝ってよッ!」


「はいはいッ! 手伝いま~す!!」


―― ジャズの窮地にミックスが間に合った頃。


大通りでは、高さ三メートルはある人型の戦闘用ドローン ―― ナノクローンの集団へと一人突っ込んでいったウェディングと、ブレイク、リーディンが合流して戦闘を行っていた。


「ったく、ブレイクが来たからよかったものの。もう勝手に飛び出したりしないでよ!」


「す、すみましぇ~んッ! あたしって煽り耐性に定評がないのがウリなのでッ!」


「どんなウリよそれ……」


リーディンと二人で前線を固めなければいけないというのに――。


サーベイランスの声を聞いただけで我を忘れたことを謝るウェディングの言い訳に、リーディンは呆れていた。


やはりハザードクラスとはいえ、まだ中学生。


そこら辺はしょうがないのかと小首を傾げている。


「ゴチャゴチャ話してる余裕はねぇぞ。あれを見ろ」


そんな会話をしている二人に、ブレイクが声をかけた。


ウェディングとリーディンが彼の言ったほうを見ると、そこには無表情の少年少女の集団が向かってきている。


「あれって、たぶんテストチルドレンの子たちだよね?」


リーディンが訊ねるとブレイクが答える。


「ああ、全員特殊能力者だろ。お前の話じゃ機械人形やドローンはもう増えそうにねぇが。こいつはかなりヤバい状況だな」


「ちょっとクリーンのお兄さん! あの子たちと戦うつもりですか!?」


ブレイクの言葉に、ウェディングが声を張り上げて訊くと――。


「戦うんじゃねぇ。全員縛り上げんだよ。当然力尽くでな」


「ならばよしです! お手伝いしま~す!」


ウェディングがブレイクに応じると、リーディンはまたも呆れる。


「なに? ハザードクラスってこういうノリなの……。ワタシ、ちょっと苦手だわ……」


そして、三人は残った機械人形と戦闘用ドローン、さらに特殊能力者の子どもたちに向かって身構えた。

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