#433
光の鎖はまるで蛇のようにメイカの身体を縛っていた。
「離せッ! 離せ半分ハゲッ!」
ジョルジは喚くメイカを黙らせるために光の拘束を強める。
苦しそうに呻くメイカ。
彼女がようやく黙ると、ジョルジはロウルへ声をかけた。
「さて、ロウル·リンギング。この馬鹿女の命が惜しかったら、抵抗せずに大人しくその首を差し出せ」
ジョルジはメイカを人質に、ロウルへ弟エンポリに殺されろと要求した。
それを聞いて、先ほど蹴り飛ばされたエンポリがロウルの近くまでやって来る。
その両手にはいつでもロウルを殺せるようにと、
メイカはきつく拘束されながらも叫ぶ。
「卑怯だぞ! あんたらそんなんでいいのッ!? こんな汚い手を使って勝って嬉しいのッ!?」
「うっせぇ馬鹿女ッ! 兄ちゃんに偉そうなこと言ってんじゃねよ!」
そこからメイカとエンポリの口喧嘩が始まった。
そんな二人をジョルジとロウルがそれぞれ止める。
こんな状況でまるで子供のようだと呆れながら。
そして、話は最初に戻った。
「ロウル·リンギング。答えを聞こうか」
「ああ、お前らに首はやるよ。けど約束しろ。その女の命は奪わないと」
「約束しよう。我ら兄弟、嘘はつかん。こいつの右目にハマっている神具は頂くが、命は奪わないことをここに誓う」
ジョルジの言葉にメイカは声を張り上げる。
「ダメだよロウルさんッ! こんな奴の言うこと信じちゃダメッ!」
ロウルは叫ぶメイカに笑みを返した。
それから彼は握っていた拳を開いてその両手を上げてみせる。
「勘弁してくれ。ここでお前を見捨てたら、あの世でマスター·クオに合わす顔がねぇんだよ」
「嫌だ! あたしのせいでロウルさんまで死んじゃったら嫌だぁぁぁッ!」
泣き叫ぶメイカ。
ジョルジはそんな彼女を鬱陶しい思ったのか、手を翳して縛っている光の鎖をさらに締め付ける。
「ぐはッ!? クソックソォォォッ!」
「さあエンポリ。早くロウル·リンギングの首を斬り落とせ。馬鹿な女のために自ら命を差し出した男だ。敬意を持って苦しむことなく殺すのだ」
「止め……止めろぉぉぉッ!!」
メイカの願いも虚しく――。
ロウルの背後から近づいていたエンポリは、その光を纏った手を振り上げた。
「あんたカッコイイよ。あんな馬鹿女のために死んでやるなんてさ。でも、安心しな。イード様が神具を手に入れれば、結局人間は全部死ぬんだから寂しくないよ」
エンポリは
さすがに屈強なロウルの首を斬り落とすことはできなかったが、振り落とされた光の刃は彼の頸動脈を切断し、そこからはまるで、ダムに溜まった水のように真っ赤な血が噴き出す。
「
ジョルジは笑みを浮かべたまま倒れたロウルに向かって頭を下げた。
エンポリはそんな兄の真似をしてか、ヘラヘラと笑いながらも同じようにしている。
「あぁ……あぁ……うわぁぁぁッ!!」
メイカは血塗れになって倒れたロウルを見て絶叫。
その声は、ここまでずっと泣き喚いていたためすで潰れてしまっている。
「あたしの……あたしのせいで……」
全身から力が抜けていく。
ロウルが殺され、光の鎖に縛られ身動きができないメイカは、完全に戦意を失ってしまったが。
そのとき、彼女の頭の中には声が聞こえていた。
《聞こえるかメイカ……。マスター·メイカよ》
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