#355
フラフラと頼りない足取りでシンへと向かっていくミックスに、プロコラットは慌てて声をかける。
「バカ野郎ッさっき言っただろうが! 早く逃げねぇとホントにヤベェんだよッ!」
「でも、放っておけないよ!」
プロコラットは言い返してくるミックスに頭を抱えて俯くと、ニヤッと笑みを浮かべた。
そして、ミックスに再び肩を貸して一緒にシンの元へ歩き始める。
殺し合いをしていた敵を助けようなど、相変わらず甘い奴だ。
それでも、まだ余裕があるなら理解できる。
しかし、すでに満身創痍に状態で無理をするなど自殺行為と何も変わらない。
どうしてそこまでするのだ。
この少年は正真正銘のお人好しだ。
救いようがない馬鹿だ。
だが、それがいい。
そこがいい。
だから自分とユダーティは、この少年を気に入ったのだと嬉しそうに高笑う。
「お前を連れて戻らねぇと、身体を張ってくれたジャズと羊にわりぃからな」
「プロコラット……。ごめん……」
「なに言ってんだよ? こういうときは笑顔で礼を言うもんだぜ。こっちこそ助けてくれてありがとな、ミックス」
ミックスとプロコラットは互いに笑みを向け合う。
そして、苦痛の表情で身体を崩壊させていくシンへと向かう。
「それで、なんか考えはあんのか?」
「いや、完全にノープランだけど……」
「だよな、俺もだ。だがよぉ」
プロコラットは、以前に心に語り掛けてくる声を聞いたことがあると言う。
その声は、ミックスのようなマシーナリーウイルスの適合者や、プロコラットのような
それは、意思の疎通を
プロコラットは、それを上手く使えばシンの暴走を止められるかもしれないと、自信なさそうに話した。
「たしかパイナップルリングだっけか? 略してパーリング。そんなヤツだ」
「パイナップルって……ずいぶんとトロピカルな名前なんだねぇ。それで、どうやってそのパーリングを使えばいいの?」
「よくわかんねぇけど、念じればいいんじゃね?」
「俺もよくジャズに言われるけど……。プロコラットは俺よりもっと適当だね……」
プロコラットの言葉に、不安を残しつつもシンの身体から放たれる衝撃に耐えながら近づいていくミックス。
そして二人は、強烈な光を放ってバラバラになっていくその身体に手を伸ばす。
左右から二人でシンの肩を掴む。
すると触れた瞬間に、ミックスとプロコラットの身体もシンと同じように青白い光を放ち始めた。
「こいつは想像以上にヤバいなッ! おいミックス! 今まで何人か加護を受けた奴に会ったことはあんだろ?」
全身の血が沸騰していくような感覚に襲われながら、プロコラットはミックスに言葉を続けた。
少なくとも自分はある。
現にミックスたちがこの
プロコラットと同じく、身体中がバラバラになりそうなミックスは、その言葉の意味がわからず訊き返す。
「それならなんとくならわかるけど、それがこの状況とどう関係あるんだよ!?」
「説明がメンドーだから簡単に言うぞ」
「いやそこはちゃんと話してよッ!」
「いいから聞けよコラッ! だからあれだよあれ! ようはこいつを感じて念じろッ!」
結局はプロコラットからはろくな説明がされなかったが。
ミックスは言われたことを実行する。
シンを止める。
彼に触れながら心の中から声をかけてみる。
そして、自分の気持ちを念じながら願う。
(シン、頼む止まってくれ! このままじゃお前もみんなも死んじゃうんだよッ!!)
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