#347

放たれた光によってジャズは吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。


今のはなんだ?


銃弾を通さず、まるで障壁のようなものが自分の身体を吹き飛ばした。


これがプロコラットがユダーティから聞いたという術なのか。


「なに今のは!? 念力サイコキネシスかなにかなの!?」


背中に走る痛みに耐えながら、ジャズは再び自動小銃を構えて立ち上がる。


まだ戦う意志が折れていない彼女に、ヴェルサーはその光る両手で円を描きながら言う。


「科学の恩恵を受けて生きてきた、あなたたち帝国の人間にはわからないでしょうね」


ヴェルサーがいうに――。


彼女は体内を流れる生命エネルギーを掌に集め、それを放出している。


これは魔術とは別の力。


鍛錬をすれば誰でも身に付けられる技術。


内容としては瞑想、リラクゼーション、呼吸法、護身術の発展型であると説明した。


「身体の中にある力を放つ……? そんな魔術オカルトじみた真似……信じられるわけないでしょッ!?」


「信じてもらわなくても構いません。どちらにしても、どうせあなたはここで死ぬのですから」


ヴェルサーは抑揚よくようなくそう言うと、先ほど円を描いて出現させた両手の光をジャズへと向ける。


左手を前方に突き出し構えると、開いていた両手を力強く握った。


その拳には光が集まり、ジャズはヴェルサーの身構えるヴェルサーの姿を見て、魔術というよりは護身術――いや格闘技だということは改めて理解する。


「特殊能力というよりは修行して得た技術か……。今までも永遠なる破滅エターナル ルーインとは戦ってきたけど、初めて見る力だ……」


「あなたたちが戦ってきたのは所詮末端の信者でしょう? この技は、教祖様から直々に教えを受けた永遠なる破滅エターナル ルーインの信者なら誰でも覚える技術ですよ」


そして、ヴェルサーはジャズへと飛び掛かった。


光に包まれた拳がまるでエネルギーの塊のように襲い掛かって来る。


ジャズは横へ転がってそれを避けたが、ヴェルサーの攻撃は止まらない。


態勢を崩した彼女の意識を奪おうと、さらに激しさを増していく。


傍にいたニコには何もできず、ただジャズが追い詰められているのを見ていることしかできなかった。


このままではやられる――。


ジャズがそう思ったとき、礼拝堂内に銃声が鳴り響いた。


プロコラットとユダーティがジャズを助けにやって来たのだ。


「兄弟の女に手出しはさせねぇッ! おいジャズからさっさと離れろッ!」


叫ぶプロコラット。


その隣に立つユダーティは、慣れない銃を撃ってヴェルサーを狙う。


だが、ヴェルサーが両手で円を描くと光の障壁が現れ、撃たれた弾丸は彼女には届かなかった。


「あなたたちが来ることは想定の範囲内です」


ヴェルサーはそう言うと、今度は大きな円を描いてその光のプロコラットたちへと放つ。


「二人ともに逃げてッ!」


ジャズの叫びも虚しく。


その大きな光は、プロコラットがユダーティのことを囲った。

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