#100

――リーディンがった後。


監視員バックミンスター副隊長ふくたいちょうであるエヌエーによって、ミックスたちは保護ほごされることになった。


安全あんぜんな場所までの移動中、監視員バックミンスター護送車ごそうしゃ内では、泣きつかれたサービスがジャズのうでの中でねむっている。


「え~と、ようするに施設しせつ破壊はかいした犯人はんにんは、その子をねらってきたってわけね」


ジャズは、車内にいるエヌエーとミックス、ニコに事の顛末てんまつを話した。


いまだにナノクローンを使ったほうの相手はわからないが。


トレンチコートの少女――リーディンはサービスを始末しまつするために、このバイオニクス共和国きょうわこくに来たということを。


話を聞いたエヌエーは、何故その幼女ようじょが狙われなければいけないのかがわからずたずねたが、その理由りゆうはジャズも知らない。


「ただ……リーディンはサービスのことを化け物っていっていました。あなたはそいつの正体しょうたいを知らないからとかそんなことも……」


「ともかく調しらべてみる必要ひつようがありそうね。大丈夫、安心して。少なくともあたしの家にいれば、まずおそわれることはないから」


エヌエーは、ドンと自分のむねたたくと、ジャズたちをなごませようとおどけて見せた。


自分の家は監視員バックミンスターの住む場所。


しかも旦那だんなである隊長と自分――副隊長が二人で住んでいる家であり、わざわざそんなところを襲うなんてつかまえてくれといっているようなものだと、コミカルにいう。


「エヌエーさんの旦那さんって、監視員バックミンスターの隊長なんですか?」


「うん、彼は小さいころからずっと一緒いっしょでね。共和国ができる前からの付き合いなの」


ジャズにかれたエヌエーは、表情ひょうじょうとろけさせると、旦那であるブラッドのことを話し出した。


むかしからあらっぽく、いつも言葉がりない人だが、やさしいところ。


どんなに凶悪きょうあく犯罪者はんざいしゃでも、相手が未成年みせいねんなら銃器じゅうき刃物はものを使用しないところ。


そして、何よりも自分や友人、家族を愛しているところ。


など、訊いてもいないことをベラベラとかたはじめた。


「今日だってね。あたしが出かける前に、あぶないマネはおれがいるときだけにしろよ、っていってくれたの! キャ~あたしったらいっちゃった! ずかしいッ!」


「あぁ……これが世にいう惚気のろけというやつか……」


あきれるジャズの横でミックスは、旦那との惚気話を続けるエヌエーを見て、大人なのに可愛かわいらしい人だと思っていた。


エヌエーの振る舞いに、国外こくがいにいる姉をかさねたのか。


ミックスはうれしそうな顔で彼女のことを見ていた。


そんな彼の横顔を見たニコは、やはりこいつは年上のお姉さんタイプが好きなのだなと、大きくためいきをつく。


しかし、惚気たエヌエーのおかげか。


車内ではゆるい空気がながれていた。


ジャズも散々さんざん呆れたせいか、すっかり落ち着きを取りもどしている。


そのとき、ミックスのエレクトロフォンに連絡れんらくが入った。


相手は彼の担任たんにん教師きょうしであるアミノだ。


「はい、アミノ先生ですか?」


「えぇッアミノ先生って……まさか君ッ!? アミノの生徒せいとさんなのッ!? 」


アミノの名を聞いたエヌエーは、大袈裟おおげさけ反りながらはげしくおどろく。


どうやらアミノが前に言っていた監視員バックミンスターの友人とは、エヌエーのことだったようだ。


エレクトロフォンの向こう側――アミノのほうもエヌエーがミックスたちといることに仰天ぎょうてんしている。


《いやー世間せけんせまいですね。先生もビックリです》


「それで先生……。一体なんのために連絡してきたんですか?」


《そうそう、そうなんですよミックスくん。じつはサービスちゃんのこと、ちょっとわかってきましたよ》

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