#35

《これより自爆じばくプログラムを作動さどうします。り返します。これより自爆プログラムを作動します》


音声おんせい合成ごうせい――ナノクローンから機械的きかいてきな声が聞こえた。


ジャズがイチかバチかインストガンをとうとかまえ、ウェディングもその場から跳躍ちょうやく


だが、すでに自爆じばくプログラムが作動しているナノクローンにはに合いそうにもなかった。


「ここまできて、ダメなのッ!?」


ジャズがトリガーを引いたと同時どうじさけんだ。


そのとき、ジャズの撃った電磁波でんじはよりも早く、ナノクローンへ向かっていたウェディングのよこべつの電磁波が通過つうかしていく。


そのどこからはなたれたかわからない電磁波が、すでに爆発ばくはつへ動いていたナノクローンの頭部とうぶつらぬき、完全に沈黙ちんもく


ブロードの計画けいかくしていたアーティフィシャルタワー爆破ばくは作戦さくせんは、その一撃を最後に失敗しっぱいわった。


「今のは……なんだったの……?」


「お姉さんお姉さん。それよりもミックスせんぱいを病院びょういんに連れて行かないと、このまま死んじゃいます~よ」


「そうだったッ! えーと、あんたは……」


「ウェディングと呼んでください」


「じゃあウェディング、悪いけど手伝ってッ!」


「は~い、お姉さん」


それからジャズはウェディングと共に、気をうしなっているミックス、ブロード、ヘルキャット、アリア四人を病院びょういんへとはこぶ。


そこまでの移動いどう手段しゅだんには、ミックスの持っていたエレクトロフォンで、彼の担任たんにん教師きょうしであるアミノに連絡れんらく


その後、彼女の持っていた大型おおがたのミニバンにミックスたちを乗せて病院へと向かった。


「ジャズちゃんッ!? いそいでと言われて来てみれば、これはどういうことなのですかッ!? 事情じじょうをッ! ちゃんと先生に事情を話してくださいッ!」


理由わけはあとで話しますから、今はともかくいそいでください!」


その移動中に、ジャズとアミノが何度も同じような会話を繰り広げていたが、ウェディングはそんな二人の様子ようすをほのぼのと見ていた。


そして、どこでいつ買ったのかもわからないチョコレートを口にしながら、ニコニコと微笑ほほえんでいる。


「まあまあ、お姉さんがた。ここはチョコでも食べて血液けつえきをサラサラにしましょう」


「こんなときにサラサラしてどうすんのよッ! つーかあんたはこんな緊急きんきゅう事態じたいのときにチョコレートなんか食ってんじゃねえッ!」


ジャズに怒鳴どなられたウェディングだったが、それでも彼女の笑みが消えることはなかった。


むしろ彼女の反応はんのうをとてもうれしそうにしている。


「お姉さんはやっぱりミックスせんぱいが好きなんですね。私の予想よそうどおりです」


「なッ!? こんなときになにいってのよあんたッ!?」


顔をにしているジャズを見て、アミノも会話かいわに入ってくる。


「先生もそこのところをくわしくきたいのですが。それで、実際じっさいのところどうなんです?」


「先生ったら聞くまでもないですよ~。お姉さんはミックスせんぱいが好き。これはリンゴが地球ちきゅう重力じゅうりょくに引かれて落ちるのと同じくらい確実かくじつなんですよ」


そんなアミノとウェディングに嫌気いやけがさしたジャズがあたまかかえ出す。


「もうイヤァァァッ! 早く病院に着いてよぉぉぉッ!」


そしていろいろな意味いみで、すぐにでも目的地もくてきちにたどり着いてほしいと叫ぶジャズであった。


――そのころ、ジャズたちがいなくなったアーティフィシャルタワーの広場では――。


破壊はかいされたナノクローンの残骸ざんがいや、ミックスとブロードの戦いでできた地面じめんのヒビが生々なまなましくのこっていた。


「あ~あぁ~、しかし派手はでにやったね」


そこには、ミックスがかよう学校の作業用さぎょうようジャケットを着た少年がいた。


それから少年は周辺しゅうへん一通ひととお見終みおわると、ボサボサ頭をきながら大あくびをする。


そして今にもねむたそうな顔で、ジャケットのポケットに入れていたエレクトロフォンを取り出した。


「はい、おれっす。ノピア将軍しょうぐん想像そうぞう通り、ミックスのやつ適合者てきごうしゃ合成種キメラグラビティシャドー二つのちからを持っていました。あと、ちょっと手をしてしまいましたが、ブロード大佐たいさけんは、ミックスとジャズで問題もんだいなく片付かたづきましたよ」


少年はノピアと呼ぶ人物じんぶつと話を始めた。


彼は変わらず眠たそうな顔のままだったが、アーティフィシャルタワーの広場でのことを事細ことこまかに説明せつめいしている。


それからハザードクラスである舞う宝石ダンシング·ダイヤモンドウェディングがミックスたちに協力きょうりょくしたことや、エレクトロハーモニー社製の効果装置エフェクトやナノクローンのこともつたえていた。


くわしいことは、ここの処理しょりの後が終わったら映像えいぞう文章ぶんしょうおくりますんで」


少年はそういうとエレクトロフォンの通話つうわを切った。


「はぁ~ヴィンテージの右腕みぎうでってのは、やっぱらくじゃないねぇ」


それから彼は実にかったるそうにし、今度は別のところへ連絡を始めるのだった。

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