完全なるノブレス・オブリージュ日和

黒井真(くろいまこと)

プロローグ

 その一瞬前まで、僕はダンジョンの中で獣耳けもみみの女のコに膝枕してもらいながら、「ハイ、アーンして♡」の言葉とともに焼いた肉を食べさせてもらい、別なコのふわふわした尻尾を撫でていた。


 僕は高校二年の夏に、トラックに轢かれて異世界に転生して、チートで無双して魔王を倒し、最終的には可愛い女のコ達とダンジョンに引きこもって早期引退生活ニートライフを満喫していた――だった。


 彼らが現れるまでは。


 黒いスーツに白シャツ、黒ネクタイ、そして黒サングラス。映画に出てくる政府の秘密工作員にしか見えないファッションの男×2に女×1の三人組――。

 彼らが目の前に現れた瞬間、ダンジョンも、獣耳の女のコ達も、勇者としての装備も、王からもらった褒美の品の数々も一瞬で消えた。文字通りのだ。

 後に残ったのは、真っ白い空間と黒ずくめファッションメン・イン・ブラックの三人組、そして僕。


 呆気に取られている僕に向かって、三人の中で一番年嵩に見える白髪交じりの男が口を開いた。


「君に、通達しメッセージに来た」

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