ワタシの望む永遠を5

「……そう、だからね、庇われた人を私は許せないと思うわ。だって、その人が庇われていなかったら、その人がもし、事故に合わなかったら……もしかしたらあの人は生きていたのかもしれないから」

まあ、今更後悔したところで私は何も出来ないけれど。

そう、呟くと穏やかに笑った。

シモンは何も言えない。ただ、静かにメルルの言葉を聞いている。

ぽちゃん、と先程机の上に零した紅茶の雫が床を濡らした。

時は戻って現在。

メルルはシモンの方を向けば穏やかかに微笑んだ。

暖かな風が優しく吹き抜ける。

シモンは胸元の服を強く握り締めた。

「……」

今にも泣きそうな顔でメルルを見つめる。

そんなシモンにメルルは笑った。

「そん顔しないで?大丈夫よ。許せなかったとしても、その相手に何かする気は無いわ」

今話してごめんなさいねと笑えばシモンの頭へと手を伸ばし優しく撫でる。

シモンはふるふると首を横に振った。

「ボ、ボクは、メルルさんの気持ち分かります。

だから、

そんなに泣かないでください」

アナタが泣くと苦しくなります。

だから、泣かないで。

笑っていてください。

そう、眉を下げてシモンはメルルを見つめた。

メルルの瞳から宝石のように零れ落ちる涙。

その言葉に驚いた声を彼女は上げる。

「え……」

メルルはシモンの言葉を聞けば己の頬を撫でた。確かに頬を伝って沢山の雫が目からこぼれ落ちている。

「ボクは、きっと。きっと彼も。アナタの大切な人もメルルさんのことを見ていてくれたと思いますよ」

そう言うと、眉を下げてシモンは椅子から立ち上がりメルルを抱き締める。

温かな体温がメルルを包み込んだ。

優しくメルルのふわふわとした頭を撫でる。

「ありがとう、シモン」

メルルはゆっくりと瞳を閉じる、

抱き締められれば彼女の背中へと腕を回した。

なぜかは分からないけれど、今のシモンは別人のように大人ぽく感じる。

不思議だなぁと心の中で呟けば、メルルは再び、ぽろぽろと涙を零した。

「どういたしまして、メルルさん。 」

穏やかにシモンが笑う。

そして彼女の前髪をかき分ければ額へと口付けた。

ゆっくりと瞳を細める。

「そっか、残された側ってこんなにも辛い想いしてるんですね」

メルルに聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。

シモンはメルルを抱きしめながら天井を見上げる。

彼もこんな思いをしていたのかもしれない。

もしかしたら、もっと酷く、辛く悲しんでいたのかもしれない。

そう思うと、申し訳なさで胸が張り裂けそうだった。

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