青い空に祝福を2
赤黒い、くまの頭のような生き物。羽の生えたグロテスクな姿のソレがリリーの影から生まれる。
次の瞬間、メリルの身体を風をきるように貫いた。
「あ……」
メリルの動きが止まる。
にこり、とリリーに笑いかけつつその場へと倒れ込んだ。
「メ、リル……?」
正気に戻ったのかリリーがメリルへと駆け寄る。
ドリームイーターはふよふよ、と浮いていた。
「御影!!!!」
思わず変身前の名前を叫ぶ。
「あは、やーだ、リリーちゃん☆今は、メリル、だよ?」
メリルの頬にポタ、ポタ、と生暖かい雫が零れ落ちる。
メリルの変身が解けた。
御影の姿が現れる。
「はは、戻っちまった……。って、いっちゃんさ、……そんなに、泣くなよ、……な?」
俺はいっちゃんの笑ってる顔が好きだぜと、笑顔を作ってみせる。
ドリームイーターが、メリルの持っていた本の中へと吸い込まれるように消えて行った。
魔力を使い過ぎたのか、リリーの変身が解けて要舞へと戻る。
「ごめん、ごめん、ごめんなさい、御影、僕のせいで……お願い、死なないで、」
懇願するように要舞は御影を抱き締める。
「んー、それは……むり、かな、」
ごめんと御影が笑う。
瞳を開いて固まる要舞。
そんな要舞に大丈夫だと御影が彼の頬へと手を伸ばした。
すり、と頬を優しく撫でれば苦笑いをする。
「願い……叶えてやれなくて……ごめん」
幸せにしたかったなぁと言葉にならなかった声は心の中で溶ける。
「っ、今そんなこと言ってる場合じゃ無いだろ!」
馬鹿っと思わず声が要舞の口零れる。
「叶えてやれなかったけど、……でも、大丈夫、だいじょーぶ、俺は、さ、もう傍には入れないけど……」
メリルは居るから。
だから、安心してよ?
これからいっちゃんに沢山の幸せが舞い降りますように。
彼に満面の笑みを見せればそっと、瞳を閉じた。
「う、うわああああああ」
世界に絶望した瞬間だった。
要舞の瞳に光が無くなる。
この日、要舞は本当の魔法少女、リリーにやっとなれたのだ。
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