その日は花が立てられて2
ゆらゆらと草木が揺れる。
台風が過ぎ去った月夜の晩。
ドレッシングは木の上に腰掛けながら月を見上げた。
「綺麗ね……まるで、何も無かったみたい」
私みたいだわ……
そう、心の中で呟いた。
素足に巻きついた包帯の付け根が風でヒラヒラと揺れる。
一緒にドレッシングの長い黄緑色をした髪が揺れた。
ドレッシングの瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
その雫を指先ですくい取ればぽとり、と地面へと落とした。
「私ったら、涙を流すなんてらしくないわね……もう、この感情は捨てたと思ったのに……」
不思議だわと空をふたたび見上げた。
空には雲がひとつもなく、先程の大雨が嘘のように澄み渡っている。
木に実のった果実をひとつ、もぎ取った。
紅く熟れたその果実をじっと見つめれば口許を緩める。
果実を持ったまま木から降りれば手に持った紅く熟れた果実が白く光り出す。
そして白い光に包まれた果実は何事も無かったのように手から消え去った。
「魔法少女もこれくらい簡単に消えてくれたら良いのに……」
そう、呟けば闇夜に消えていった。
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