くるくる回るは思い出のメリーゴーランド7
之彦の為に水を買いに自動販売機を探すゆうきと子音。
ようやく見つけた自動販売機。
小銭を入れ、ひとまず水を一本買う。
ペットボトルの水をしゃがんで取っている時だった。子音がゆうきに話し掛ける。
「ねぇ、ゆうきくん」
聞いて欲しいことがあるんだ、そう呟いた。
「なんですか、子音くん」
子音が言うべきか言わざるべきかと口を噤む。
そして、決意ができたのかゆうきへと話しかけた。
「子音ね、思い出しちゃったの」
今にも泣きそうな顔でゆうきを見つめる。
「思い出した、ですか?」
こくこく、と頷く子音。
「そう、何かは言えないんだけどね、とってもね、大切なこと思い出しちゃったんだ」
眉をへの字に下げてゆうきに訴えかけるように話した。
「だから、その人を子音は助けないといけないの」
その声は今にも泣きそうだった。
ゆうきが子音を見上げる。
「大切な話をしてくれてありがとうございます子音くん。実は僕も大切な人が居たんです……でも、その人は僕の前から姿を消しました。今は何処にいるか分かりません……」
徐々に声が小さくなっていく。
子音が今にも泣きそうな顔をした。
「ねぇ、ゆうきくん。もし、もしだよ。その人に会えるってなったらキミはどうする?」
…………
沈黙が流れた。そして、答えが導き出せたのかゆうきはゆっくりと口を開く。
「会いに行きます。どんな事があろうともきっと、会いに行きます。だって、ずっと探していた人ですから」
その言葉に安堵したように子音は穏やかに瞳を細めて笑う。
「ゆうきくん、ありがとう」
さあ、と二人の間に風が吹き抜けた。
「子音くん……?」
思わず彼に問いかけた。
夕日が子音を包み込むように光っている。
まるで、今にも消え入りそうだった。
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