ニャニャルニャー:交響曲第九番『泥棒猫の歌』

静かな夜 都会の静けさはだれかの意図

サーチライト――限定された光のトンネル

噂の奥でくぐもるのは疫病えきびょうのメロディー

夜に価値を奪われた、恐怖の旋律せんりつ

ねずみたちが牛耳ぎゅうじる、冷たく湿った地下街

そこは、ありえた僕たちの住む、逸脱者いつだつしゃたちのみやこ


泥棒猫どろぼうねこはピアノ協奏曲きょうそうきょくさえ盗み去るだろう

その協奏曲はじつに三百年ものあいだ、

ごうつくばりな一族に独占されてきたのだ

古いという以外には何の特徴もない曲

もう今となっては、だれの心にも響かない

猫はその鋭い爪で、曲そのものを引き裂く

猫はただ、自らの怒りのためだけに、

毎日を生きている。だから盗むのだ。ゆえに引き裂くのだ

害のない不正は、このようにして世界から消えてゆく

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