ちぎれたチーズは子細な紙片

チーズトーストとけてとろけて

時の彼方かなた虚空こくうに消える


過ぎ去った軽微けいびな思いは

重たい香りと混ざらない

程よい焼き加減が

生まれてこの方わからない


失った覚えのない独占欲どくせんよく

こんなに遠ざかって

なお、断ち切れない

それは絹糸きぬいとのようなチーズの未練みれん


チーズトーストとけてとろけて

時の彼方の虚空に消える


ふと吐きだすめ息に

チーズのげ目を見出みいだして

涙こぼれてゴルゴンゾーラ


自分がこんなに悲しいのが悲しくて

胸に空いた穴は、フレッシュチーズじゃめられない

ただ、その事実の為だけに

胸におさめた涙腺るいせん

熱でゆるんだチーズのように

とけてこぼれてとめどなく


チーズトーストとけてとろけて

時の彼方の虚空に消える

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