第九章第28話 発見

2021/08/02 誤字を修正しました

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 溶岩の海に別れを告げ、再び狭い通路へと足を踏み入れた。


 一度登り、下ってからまた登るという面倒な通路を進んだ私の進路を金属製の重そうな扉が塞いだ。


 扉には南京錠で鍵が掛けられているが、ボロボロに錆びついており少し引っ張れば簡単に壊せそうだ。


 よし。


 私は南京錠を掴むと力一杯引っ張った。


 バキン、大きな音と共に破壊された。私の力に耐えられなかった掛け金が無残に曲がって途中で千切れ、金属光沢のある断面が姿をのぞかせている。


 あ、あれれ? 中身は錆びていなかったのに引きちぎってしまった。


 あ、あはははは。よく考えてみれば、減ったとはいえ私の STR はまだ 369 もあるんだった。


 ま、まあ、開けられたしね。うん。とりあえず細かいことは気にしないでおこう。


 そして重い扉を何とか開けた先には何と! 金貨や宝石などが山のように積み上げられていた。


 おお! すごい!


 絶海の孤島に隠された財宝を見つけるなんて、まるでトレジャーハンターにでもなったような気分だ。


 実はこれ、海賊王がこの世の全てを置いてきた大秘宝だったりして。


 うん。すごく楽しい。暇で暇で仕方がなかったところに突如やってきた非日常体験は本当に楽しい。


 いやあ。興味本位で洞窟に潜ってみて本当に良かった。


 よし。満足したし帰ろうかな。


 あれ、でも待てよ? 姿は見ていないけどアイリスさんはこの場所のことを知っているのかな?


 誰かが通ったような形跡はなかったし、きっと知らないような気がする。


 だとすると、これは持ち出してアイリスさんにあげたほうが良い気がする。そうすれば、この財宝を売ったお金できっとあの子たちが快適に暮らすための道具を買ってきてもらうことだってできるはずだ。


 うん。それがいい。


 私はこの部屋にある財宝を根こそぎ収納に入れると今度こそこの部屋を出ようと回れ右をする。


「あれ? リーチェ? どうしたんですか?」


 リーチェが何やら壁の一点をじっと見ていた。


 何の変哲もない壁に見えるけれど……。


 え? この壁の向こうに何かある?


 うーん。でも私はサラさんのような筋肉魔法は使えないしなぁ。


 そう思いつつ何気なくその壁に触れてみた。


 ん? あれれ? なんだか妙に心地良いような?


 そう。この感じはまるで聖属性の何かを吸収しているときのような気持ちよさだ。


 ということは、これはもしかして封印だったりするのかな?


 えい! 封印解除!


 そう念じて【聖属性魔法】を発動すると壁が淡く光る。


 そしてやがてその光が消えると目の前にあったはずの壁が消滅しており、通路が続いていた。


 おお! すごい! これはもしかしてさらにすごい財宝があるやつかな?


 うん。面白そうだし行ってみよう。


 そうして通路を進んでいくと、すぐに小部屋へと辿りついた。


 その中には小さな祭壇があり、キラキラと白い光を放つ小さな宝玉が安置されている。そしてその周りには何やら黒いもやが纏わりついているではないか!


 瘴気だ!


 私は条件反射でそれを浄化すると祭壇の前に立つ。


 うーん? この宝玉は一体なんだろうか?


 試しにその宝玉をつまみ上げてみた。


 あ! こ、これは!


 ものすごい聖なる力が込められている!


 どうしてこんなすごいものがこんな場所に?


 やっぱり海賊王が隠したのだろうか?


 でも聖属性のものを封印するなんて、なんだか海賊王っぽくない気がする。


 ということは、残念ながらこれは海賊王の大秘宝ではないのかもしれない。


 いや、待てよ? もしかすると実はこれが大秘宝で、さっきの財宝の山はこれを隠すためのダミーだったという線もあるかもしれない。


 うん。そういうことにしておこう。だって、そのほうが楽しそうだもの。


 って、あれ? 何だかリーチェが私のほうをじっと見ている。


 あ……。


 こほん。ちょっとはしゃぎすぎたかもしれないね。


 とりあえず、この宝玉を貰っていく代わりに種をここに置いていこうと思う。


 だって、ここに瘴気があったということはどこからか瘴気が流れてきていたということなのだと思う。


 ということは、この宝玉を置いておくよりも種を置いておいたほうがずっと役に立つはずだ。


「リーチェ。種をお願いします」


 召喚したリーチェに魔力を渡して種をもらい、それを祭壇の上に置いた。


 よし。これでもう安心だ。


 あとはもう一つの通路を探検したら村に戻るとしよう。


 あまり遅くなると心配するかもしれないからね。


◆◇◆


 もう一つの通路はひたすらに登り階段が続いていた。


 さあ、この先には一体何が待っているのだろうか?


 さっきの部屋には海賊王の大秘宝(仮)があったのだから、こちらの通路には滅びた古代文明の遺産……はさすがにないか。


 個人的には財宝の類ではなく何か面白いものがあると嬉しいのだけれど。


 そんなことを考えながら長い登り階段を延々と登っていくと、なんとその先は行き止まりだった。


 いや、正確に言うなら天井が崩落して土砂で埋まっているようだ。


 うーん。残念。


 これじゃあ先には進めそうも……いや? そんなことはない。私には崖中温泉を掘り抜いた【土属性魔法】と収納があるじゃないか。


 よし! 掘ろう!


 そう考えた私はせっせと【土属性魔法】で土を動かして穴を掘り始めた。ゴロゴロした石や岩は収納に入れ、細かい土や砂だけを押し固めてやる。こうすることで岩を変形させるという大変な作業をする必要がなくなるため、掘削のスピードが劇的に早くなるのだ。


 そうして掘り進めていくと、その先の壁からわずかに光が漏れてきたではないか!


 お? おおお?


 私はわくわくしながらその光の漏れている穴を覗いてみる。


 するとなんと! その穴から綿あめのような雲が見えたのだ!


「リーチェ。ここから島の上に上がれますよ! 行きましょう!」


 私は霧になるとその小さな穴を通り抜けて外に出た。そして霧化を解いた私はふぅと大きく息を吐いて周囲を見回す。


 あ、ここはあの二重カルデラの内側の山の山頂だ。


 なるほど。こうなっていたのか。


「ああ、楽しかったですね。リーチェ」


 私がそう言うと、リーチェがジト目で見つめてきた。


 あ、あはは。ちょっと、やりすぎちゃったかな?


 こうして久しぶりの冒険に大満足な私は、村に戻るべく歩き始めたのだった。


 あ、でもその前に温泉に入ろうかな。

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