第七章第25話 救助活動
私たちは動けないシーサーペントを置いてそのまま救護活動の手助けに向かった。
え? 放置するなって? いやいや。だって倒す手段は無いんだからどうしようもないもの。
シズクさんが一撃を与えたところからも出血はしていたし、そのうち力尽きてくれるんじゃないかな?
それに結界にも手を加えて空気は中から外への一方通行に、水は外から中への一方通行にしておいたからね。
ただ、今の私は結界を使えないので防壁の展開だけはすぐにできるように気を付けておこう。
さて、シーサーペントが手当たり次第に水のブレスを撃ったせいで港のあたりはもう滅茶苦茶になっている。
係留されていた船のほとんどが破壊されてしまったうえに港の建物はほぼ全壊している。さらにブレスの届いた範囲の建物も少なくない被害が出ている。
「クリスさんとシズクさんは瓦礫の下にいる人を助けてください。私は負傷者の治療をします。ルーちゃんは、精霊の力でどこに人が埋まっているか探せませんか?」
「はい。お任せください」
「任せるでござるよ」
「はいっ! できますっ!」
みんなそれぞれ返事をするとそれぞれの仕事を始める。
ルーちゃんとマシロちゃんが負傷者の場所を探して、クリスさんとシズクさんで瓦礫をどかし、負傷者を私が治療する。
うん。我ながら良い采配だ。ただ、やはり私の手が空いてしまう。
ううん。もっと他の人が手伝ってくれればいいんだけど……。
ただ、残念ながらこの現場にダルハの兵士たちはまだ来ていない。港に集まっているところを見るとどうやらシーサーペントをどうにかしようとしているようだ。
いや、今はそれを放っておいてほしんだけどな。
「フィーネ様」
「あ、はい。治癒!」
こうして私たちはせっせと瓦礫を掘り出しては負傷者を治癒する。
「あ、あ、あ、まさか……聖女様……おお、神は偉大な――」
「祈りは良いので安全な場所に避難してください。ここは瓦礫が沢山あって危険です」
「は、はい」
気持ちは分からないでもないが、毎度毎度祈ろうとするのは勘弁してほしい。
「人手が足りないでござるな」
「やはり私が兵士の人たちにお願いしに行きましょうか」
「フィーネ様。こちらの怪我人を」
「あ、はい。治癒!」
ううん。やはり離れるのは難しそうだ。どうしようかと考えていたその時だった。
「「聖女様!」」
この声は城壁にいたはずのサラさんとハーリドさんだ。
「聖女様! ご無事で何よりです」
サラさんがそう言って筋肉をぴくぴくさせている。
「サラさんにハーリドさん、どうしてここに?」
「シーサーペント出現の報せを聞いた直後に凄まじい速さで港に向かう皆様を目撃し、慌てて追いかけてきたのです。それより聖女様、早くシーサーペントを倒さねば!」
なるほど。ハーリドさんが私たちを見つけて、サラさんを連れてこっちに追いかけてきたのか。
「いえ。シーサーペントはもう私の結界の中から出ることはできません。ですので今は怪我人の救助が先です」
「なんと! シーサーペントを封印なさったのですか! さすがは聖女様です。では兵たちにそのように伝えて参ります。サラ殿下、どうぞこのまま聖女様のお側に」
「はい」
そう言ってハーリドさんは港でシーサーペントを見張っている兵士たちのところへと走っていく。
「聖女様。わたしも手伝います」
「サラさん?」
「わたしはこう見えても土属性魔術師です。それほどレベルが高いわけではありませんが、こういった事は得意です」
おお、それは心強い。
「じゃあ、お願いします。そこの建物の下敷きになっている人がいるみたいなのでお願いできますか?」
「お任せください!」
そういってニッコリ笑うと、再び筋肉をぴくぴくした。
そして私の指さした建物につかつかと近づいていくと何か魔法を唱えた。そして、瓦礫の山に触れる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
そう言って気合を入れたサラさんは瓦礫を丸ごと力づくで持ち上げた。
「はっ?」
バラバラになっているはずの瓦礫がくっついているから、きっとあれが【土属性魔法】の一つ成形魔法なのだということは分かる。
だが、なんというか、うん。いや、ええと。そう、あれだ。どういう筋力しているの?
って、違う!
私は慌ててサラさんが持ち上げた瓦礫の下に滑り込む。そこには一人、二人、三人の子供とそのお母さんが全員血だらけで横たわっている。
「あ、た、たすけ……」
そのうちの一番小さな女の子はまだ意識があるようだ。まだ五歳くらいだろうか?
「大丈夫ですよ。助けに来ました」
私は笑顔でそう言うと、子供たち二人を抱きかかえて通りに避難させ、続いてお母さんと残る子供を避難させる。
「まとめて、治癒!」
治癒魔法の光に包まれた四人の傷はすぐに癒えた。
「あ、あ、あ……」
その子は私を見て目をまん丸にして驚いて、その後瓦礫を持ち上げているサラさんを見るとそのまま失神した。
ああ、うん。そうだね。びっくりするよね。
「サラさん、ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」
私がそう伝えるとサラさんは瓦礫を元の場所へと戻したのだった。
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