第七章第23話 ダルハ防衛戦
2021/12/12 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
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「ルーちゃん! あっちでまとまっているサボテン達を!」
「はいっ! マシロっ!」
「シズクさんはあそこのイエロースコルピの集団をお願いします!」
「任せるでござる」
「クリスさんはあっちから向かってきているトカゲを止めてください!」
「はっ」
私は三人に指示を出すと結界を展開すると、イエロースコルピに無謀な特攻をした兵士たちを治療する。
「解毒! 治癒!」
淡い光と共に死にかけていた兵士たちがみるみると息を吹き返す。
「おおお……」
「せ、聖女様……!」
「神はいだ――」
「まだ敵は残っている! 町と聖女様を守りたくば戦え!」
ビタンとなりそうなになった兵士を指揮官と思しき人が叱り飛ばす。
「は、はいっ!」
するとその兵士はビクンとなって背筋を伸ばすとくるりと魔物たちに向き直る。
これは、新兵だったりするのかな? だとするとさすがにこんなに強い魔物と戦わせるのは間違いなんじゃないだろうか?
しかしそんな事情を魔物たちが汲み取ってくれるはずもなく、今度はネズミの魔物がその兵士に飛びかかってきた。
「う、うわぁ」
「防壁」
反応できずに噛みつかれそうになっていたので私は防壁で守ってあげる。
「何をしている! さっさと斬れ!」
「ひ、ひぃぃっ」
そう言いながらも闇雲に振り回された剣は空を切り、剣はその手からすっぽ抜けて飛んで行ってしまう。
あ、なんだかその手からすっぽ抜けるのは親近感が湧くなぁ。
って、違う。
「ええい、この馬鹿者が!」
しびれを切らした指揮官の人がネズミを一撃のもとに斬り捨てる。
「守るべき聖女様に守って頂くなど貴様何をやっているのだ! 恥を知れ! しかも折角作って頂いた隙を無駄にするなど! 貴様はもう下がっていろ! 邪魔だ!」
「ひぃぃ」
そう言われた兵士は腰を抜かしてしまう。そしてそのまま尻もちを着いた状態で後ずさっていく。
うん。その状態じゃ戦えないだろうし、その方が良いかもしれないね。
私が戦場を見渡すと、シズクさんは順調にイエロースコルピを斬り捨てている。あちらはしばらく待っていれば多分大丈夫だろう。
ルーちゃんは私の隣でマシロちゃんに魔力をあげてはサボテンの切り株を作っている。切り株といっても足が生えているのでなんとも奇妙な切り株だが……。
それとサボテンもルーちゃんが風の刃の発生源だと分かっているようで、麻痺の毒針をこちらに向かって飛ばしてきているが全て私の結界で防がれている。
弓矢はまだ使っていないし、今のところ
クリスさんも危なげなくトカゲの群れを斬り捨てている。うん、今のところ大丈夫そうだ。
後はあまり強くなさそうなこのネズミの群れを兵士たちに何とかしてもらえば良いのだけれど……。
うん、なんと言うか、被害甚大だ。
クリスさんとシズクさんが別格だというのは分かるけど、やはり目の前で人が倒れていく光景というのはあまり見たくない。
クリスさんとシズクさんの状況を確認しながら適切な場所に防壁を置いて、それから次々やられているダルハの兵士の皆さんを治癒するのは中々に神経を使う。
そうして一時間くらいだろうか? 時間はよく分からないが 7 ~ 8 割くらいの魔物を倒し終えたころ、私たちのところに町から伝令の兵士がやってきた。
「大変です。海から! 魔物が攻めてきました。南の海にいるはずのシーサーペントです!」
「何だとっ!」
それを聞いた司令官が大声を上げる。
ああ、確かグリーンクラウドからの交易船が通れない原因だったよね?
「何匹だ?」
「一匹です。おそらくはぐれ個体ではないないかと思われます」
「くそっ。お前とお前とお前の隊は港に行け! ここは聖女様のおかげでどうにかなった」
「ははっ」
そうして部隊の一部が引き揚げていく。
あれ? これは私も行った方が良いかな?
「フィーネ殿! 拙者たちも港に行くでござるよ。これだけ倒せばもうこちらは大丈夫でござる」
「そういえば、そのシーサーペントって強いんですか?」
「水のブレスを放つ災厄級の魔物でござるよ」
「え? まずいじゃないですか! 急ぎましょう」
こうして私たちは砂漠の戦場を任せると港へと急ぐのだった。
あ、もちろん私はクリスさんのお姫様抱っこだよ?
だって、こうしたほうが早いし。それに何だかもう慣れてあまり恥ずかしくなくなってきからね。
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