ルイの卒業式編 結婚式前の物語。 前編
雪解けの季節。都心では一足早く春の訪れとして梅の花が咲き始めたらしい。花見をしたいがコロスケ(コロナ)の影響で自由にすることはできない。ルールを守れない人間がいる以上しょうがない。そんな人間のためにこっちが我慢するのは少し馬鹿馬鹿しいが、今自由に楽しんでいる馬鹿どもと同じにはなりたくはない。
ルイとひかるの結婚式の少し前。ルイの高校の卒業式があった。ルイには別に来なくていいと言われたのだが、行かないわけにはいかない。父さんと真心は仕事、愛は大学があったので母さんと自分だけで行くことにした。ひかるも行きたいと駄々をこねていたのだが、仕事が終わってなかったので母さんがたくさん写真を撮ってくると約束をして、渋々納得していた。
ルイの高校は自分が出たところでもあるので、久しぶりに校門を跨いだ。久しぶりといってもまだ5年くらいしか経ってない。しかも私立高校なので先生方の顔ぶれもあまり変わっていなかった。
実行委員会の生徒に誘導されるまま、保護者の待機場所まで行った。
「あら、佐々木さん。隣はお兄さんですか?」
母さんの知り合いであろう保護者の方が話しかけてきた。
「そうなんです。どうも、弟離れができてない兄なもんで。」
母さんの言葉はすこし無視するとして自分もその人に軽く会釈する。
母さんは意外に学校の役員を積極的にやるので顔が広いし立つ。自分の時も真心の時も愛の時も、もちろんルイの時も役員の席は一度も離れなかった。必ずと言っていいいほど学校行事にも顔を出していたので少し小っ恥ずかしい感じがあった。
卒業式までは少し時間がったので、自分は久しぶりに学校内を探索することにした。自分は玄関まで戻り、学校の勲章とでも言おうか、部活動のトロフィーや写真のガラスケースも前で立っていた。もちろん自分が21世紀枠でセンバツに出た時の写真も飾ってあった。
「おう。寛か。久しぶりだな。」
「お久しぶりです。監督。」
自分の後ろにいたのは、恩師でもある野球部の監督だった。今は、生活指導主任で、来年は教頭になるらしい。
「そうか。ルイはお前の弟だったっけか。」
「はい。そうです。」
監督は自分のことも、家の事情も知っている。ルイが同じ高校に入るときに相談に乗ってもらったこともある。
「もう、そんなになるのか。この写真からもう5年も立つんだな。」
うちの野球部は特別強いわけではない。中くらい。毎年、2回戦か3回戦でシード校に当たって負けていた。自分がいた時代が特別強く、2年の夏に決勝、2年の秋には地方別の大会で3位になった。
「今はどうなんだ?野球してるのか?」
「大学で肩壊してからなかなかやる機会はなかったんですけど、職場の方とやる機会がありましてそれっきりですかね。」
「そうか。ならよかった。今度うちに顔出してくれよ。喜んでくれると思うぞ。」
「はい。わかりました。」
監督と話していると、いい時間になったので自分は保護者の待機場所に戻った。
「どこ行ってたの?」
「監督と話してた。」
「そう。私も後で挨拶しにいかなきゃ。」
時間になり、誘導の生徒に連れられて会場に入った。
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