第87話大原寂光院にて 翼のお見合い観

一行は寂光院に到着。

寂光院は天台宗の尼寺である。

歴史としては、推古2(594)年に聖徳太子が父の用明天皇の菩提を弔うために建立されたとの伝承。

当初の本尊は、聖徳太子御作と伝えられる六万体地蔵尊であったけれど、現存していない。

その後、鎌倉時代に制作された旧本尊(重要文化財だった)は、平成12(2000)年5月9日未明に発生した火災により焼損。

現在は美術院によって模刻された地蔵菩薩像が本堂に安置されている。


初代住持は聖徳太子の御乳人であった玉照。

敏達13(548)年に出家した日本仏教最初の三比丘尼の一人。

その後、代々高貴な家門の姫君等が住持となり法燈を守り続けて来た。

また、崇徳天皇の寵愛をうけた女官の阿波内侍が、出家のあと永万元年(1165)に入寺し、建礼門院に仕えた。

阿波内侍は、柴売りで有名な「大原女」のモデルとされている。


建礼門院は、平家滅亡後、出家し、寂光院に侍女たちとともに閑居。

壇ノ浦で滅亡した平家一門と、我が子安徳天皇の菩提を弔いながら、終生を過ごした。


一行は本尊に合掌した後、境内を散歩、ひなびた雰囲気を味わう。


「歴史の舞台、そんなお寺」

「いつ来ても、整ったお庭で」


叔父晃弘

「これは、四方正面の池」

「北側の背後の山から水を引いて、三段に分かれた小さな滝」

「池の四方は回って見られるように小道」

「本堂の東側からとか書院の北側からでも、四方のどこから見ても正面となるから、四方正面の池」


少し歩いて叔母由紀美

「これが建礼門院様の御庵室跡」

「今は石碑が立つだけ、あの奥に建礼門院様が使用なされたと言われる井戸」


特に女子高生三人組からは言葉がなく、「建礼門院徳子 大原西陵」で手を合わせた後、再び来た道を戻る。


叔父晃弘

「三千院はどうする?」

「もう少し時間がある時にゆっくり」

叔母由紀美

「それが賢い、すでに肌寒うなって来た」

「仕事の話も進んで良かった」

叔父晃弘

「そやな、ええ話や」

叔母由紀美

「翼ちゃんが来てくれただけでもうれしいのに」

「東京に行ったばかりで忙しいのに無理言って」

「いや、気分転換になります」

「元々、先祖は京都だから」


そんな話を聞いていた美代子が、母由紀美に声をかけた。

「なあ、母さま、心配や、西陣の可奈子さんのこと」

「さっきから、ずっと話しおうていたんやけど」

「うまくまとまらん」


そんな美代子に答えたのは、翼だった。

「美代ちゃん、心配しないでいい」

「是々非々で対応する」

「最初から、会う前から、色眼鏡では見ない」

「今後のお付き合いもある、それは確か」

「でも、可奈子さんのお店とだけ、付き合うわけではない、それも確か」


叔父晃弘が笑顔。

「まあ、頼もしゅうなった、心配ない」


ただ、女子高生三人組は、まだまだ不安顔を変えることが難しいようだ。

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