第85話農業研修計画 翼が女子高生に意外な提案

翼と辻の話題は、しば漬けから農業研修に展開。


「何らかの形で、希望者、あるいは、もう少し多い人数で、農業研修を考えています」

「まだ素案段階、もし決まったら、その際に、是非、ご指導をお願いします」


辻の顔が、ほころぶ。

「ええお話やと思います」

「喜んでお手伝いさせていただきます」


叔父晃弘も、会話に入って来た。

「翼君、ローテーションを組んで従業員もわしらも、全員でも構わん」

「どうですか?辻さん」

叔母由紀美も、黙ってはいない。

「まさに、趣味と実益、勉強にもなる」

「みんなで、こんな空気がいいところで、農作業なんて楽しいと思います」

「作物の成長を見ながらなので、旬がわかりやすい」


すると、辻の顔が変わった。

「そうなると・・・申し訳ないほど・・・ありがたいことに」


翼は、辻の考えていることが、わかった。

「やはり、広い畑、辻さんも疲れる時がありますよね」

「そういう時に、ローテーションでも、作業のお手伝い、作物の運搬とかあると」


辻は、顔を赤くする。

「情けないことですが、若の言われる通り」

「腰が痛い時も、風邪を引いている時も」

「なかなか、後継者がいない・・・若いもんには頼みづらくて」


叔父晃弘は、真面目な顔。

「それが、大原だけでなくて、日本全体の農業の問題点」

「誰も、手が汚れる仕事を好まない、食べるだけの人に」


叔母由紀美は、言い切る。

「でも、この大原の味がなくなってしまったら、私たちの店も困ります」

「もう、話を進めましょう、どんどんと」


翼は、少し離れて、スマホで誰かと話をしている。

それも終わったようで、叔父夫婦と辻に笑顔。

「はい、私の両親と兄夫妻もOKと」

「ついでに全店舗で、基本計画とか、契約条件とか、すぐに作成するとのこと」


辻が照れたような顔。

「何や、すごい話になりましたな」

そして、翼に頭を下げる。

「ほんま、ありがたくて」


翼は、やさしい顔。

「いえいえ、単に美味しい物を食べたい」

「そのための、努力をしたいだけで」

「それも、できれば、みんなが安心できて、喜ぶようにと」


また、翼は、つまらなそうな顔の女子高生三人に声をかける。

「聞きなれない話で、関心がないかもしれない」

「そこで、どうかな、せっかくだから、紫蘇を使ったオシャレなものを考えるとか」


従妹美代子と梨乃、沙耶がキョトンとなっていると、翼。

「紫蘇ジュースは定番過ぎる」

「例えば、ケーキ、バニラアイスにかける、紫蘇ベースのソース」

「甘さを強調するか、鮮烈さを強調するか」

「他にも、いろんな野菜があるから、新作メニューを考えてみるとか」


美代子

「やる?」

梨乃

「当たり前や、頭がグルグル回り出した」

沙耶

「なあ、パンナコッタに・・・どうやろ」

美代子

「パンナコッタのつるっとした甘酸っぱさに・・・酸味は控えめに甘めのソースかなあ」

梨乃

「上品に仕上げたい」

沙耶

「紫蘇の時期でも違うんやろか、そうなると畑にも通わんと」


翼からの思いがけない提案は、女子高生たちの目を輝かせてしまったようだ。

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