第35話神田明神鳥居隣の甘酒店 そして中央線に

江戸時代からの歴史ある甘酒を飲みながら、心春は翼にあれこれと話しかける。

「翼さん、本当に美味しくて、お味噌の付け合わせも絶妙で」

翼も話を合わせる。

「伝統の味で、守りたいと思うね」

「決してなくしてはならない」

心春

「家族経営みたいで、それも好き」

「江戸下町の人情とか風情」

「日本人が忘れてしまうような、そんなものが、しっかり残っている」

心春は翼を正面から見る。

「また時間ができたら下町も歩きたくて」

翼は、「そうですね」と頷くだけ、「一緒に行きましょう」とまでは、応じない。


二人は甘酒を飲み終わり、再び聖橋を渡り、御茶ノ水駅に。

心春は切符売り場で少し迷う。

「私もスイカ買おうかな」

翼は全く興味ないので、横を向いている。


心春が翼に相談を掛けて来た。

「スイカにすると、東京人みたいになるかと」

翼は苦笑しながらアドバイス。

「モバイルのほうが便利かな、スマホと一体に」

「でも、お好きなように、スムーズに乗れればいいかなと」


結局、心春はスイカを購入、そのまま中央線に乗る。

「買って見たくて・・・」と恥ずかしそうな顔。

ただ、御茶ノ水から中央線に乗った理由がわからないらしい。

「翼さん、どうして神保町ではなくて?」


翼は仕方ないので説明。

「ここから神保町駅まで歩くと、相当な距離」

「だったら中央線で吉祥寺まで行って、井の頭線乗り換えで高井戸にしようかなと」

心春は、「はぁ・・・」とため息。

「さっぱりわかりません、田舎者です」

「やがて慣れます、メトロも都営も感覚で乗るようになります」


ただ、それでも心春は不安らしい。

中央線の中で翼の正面に立ち、30センチと開けない。


四谷付近で、中央線が揺れた。

「わっ!」

心春は、本当に驚いたらしく、そのまま翼にしがみつく。


翼は謝った。

「ごめんなさい、言っておかなくて」

「中央線は、時々揺れます」


心春は、真っ赤な顔。

「いえ・・・こちらこそ・・・」

「抱き着いちゃって・・・恥ずかしいです」

「はしたなくて・・・ごめんなさい」


翼は、やさしい言葉をかける。

「支え棒で構いません」

「不安だったら、支えるよ」


心春は。ますます赤い顔に。

「おっちょこちょいで・・・」

「気が高ぶっていて・・・」

「何か、体当たりみたいで」


翼は苦笑。

「答えようがなくて」

「こんな可愛いお嬢様に」


心春は、また翼との距離を縮めた。

翼は、新宿で人が降りた時点で、空いた座席に座ろうと考えている。



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