第14話 メンチ

「チョロチョロ、チョロチョロ小蝿みたいに飛び回りやがって、ウザってぇ~な!!」

龍人化したチェンと鬼の悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ、武装警羅隊隊長マサキとの攻防が続き、この村の地形が変形してしまう程の激しい闘いを繰り広げる


・・・もう、全然ダメじゃん!

コイツ、いくら攻撃を受けても全く堪えねーし!!


このままだと龍人化のタイムリミットが!?


『さっきから喧しいぞ!今、良いとこなんだよ・・・!!』


苦戦を楽しんでんじゃねーよ!

もう簡辛ガンシン、連れて逃げの一択でいこうぜ!!


『・・・・・・』


―――無視してんじゃねーよ!!


「『今度は、さっきの倍だ!落胆させるなよ!!―――スゥゥゥーーー!!!』」

「・・・・・・っ!!」

チェンが肺に空気を大量に吸い込み始め、マサキが警戒する


「ねーマチマサ!マサキ隊長がこんなに苦戦する姿、見たことある?」

「僕の記憶が間違いなければ一度もないな・・・!!」

離れた位置の瓦礫の後ろに隠れるスミレとマチマサが話し合う


「結局、地図を書き換えないといけない事態になってるしね!」

「これだから悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ者同士の戦闘は、現実離れしてるから嫌だ!嫌だ!!」

マサキ隊長を見守ることしか出来ない2人は、悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ、人間同士の闘いに呆れ返る


「『―――地獄ヘル業火ファイヤー!!』」

「・・・また、それか・・・―――っ!!」

吸い込んだ空気に火を織り混ぜて吐いた火炎放射の様な息吹きを広範囲に吹き出すと、躱す素振りも見せないマサキが受け切る


「『・・・・・・!?』」


・・・よっしゃ!直撃だ!!


そのまま最大火力で滅却しろ!!


・・・・・・って!


―――あれっ!?


「テメーどういうつもりだ?何故、止めた・・・!!」


・・・いや、本当にマサキの言う通りだよ!

何で止めたんだ?ロン!!


―――最大の勝機だったのに!?


『マサキの動線をよく見ろ!』


・・・え?

何々どういうこと!?


―――あっ!

マサキの後方に部下2人の姿が!!


・・・そうか!

マサキは、炎から部下を守る為に攻撃を躱さずに自分の身を盾にして防いだのか・・・


―――めっちゃ良い上司やん!!


「『―――水を差した!非は、無かったが・・・結果、貴様を不利に追い込んでしまった!!』」

「・・・同情したっていうのか?」

攻撃を止めたチェンが自分に対して哀れみを抱いたと判断したマサキが激怒する


「『―――逆だ!これで勝てても寝覚めが悪いからな・・・!!』」

飛行するのを止めたチェンが地に降り立ち、マサキの元へ歩み寄る


「『我は、この場から一歩も動かぬ上、一切防いだりもせん!全力で打って来い!!』」

「・・・へへっ!後悔しても知らね・・・―――ぞっ!!」

腕を振り回し、余裕たっぷりのチェンの顎へアッパーを入れる


「『―――っ!!』」

マサキの全力で振り上げた拳が顎へと直撃するがチェンは、顔色一つ変えずに、その場で平然と立ち尽くす


―――オイオイオイオイ・・・!!


・・・マサキの野郎!

何て怪力パワーしてやがるんだ!!


俺の顎を殴った拳圧の衝撃で空が割れているぞ!?


「・・・こ、これを耐えるとは、マジか!お前っ!?」

「『所詮素人の打撃!―――打撃とは、こういうものだーー!!』」

チェンが足を龍の尾のようにしならせて、マサキの胴体へ蹴りを入れる


「・・・・・・フンッ!!」

マサキもチェン同様に鋭い蹴りから一切動じずに耐えてみせる


・・・龍人化した本気の蹴りだぞ!?

それを防がずに受け止めやがった!!


当たらなくても蹴りの風圧で突風が起こるのに・・・


「瓦礫を吹き飛ばす威力の蹴りとは・・・・!!―――やるじゃん!!」

チェンの脚力に感心し、今度は、マサキがチェンの腹を殴りつける


「『・・・・・・っ!!』」

マサキの拳を真っ正面から受け切るが、あまりにも強い拳圧の衝撃がチェンの背中まで貫き、その衝撃に驚いた鳥達が一斉に羽撃いて行く


「『―――これが武術だ!!』」

「―――オラッーー!!」

チェンが鋭利な爪で突きを放ち、マサキが受け切り、カウンターで膝蹴りを入れ、それに耐えたチェンが反撃をし、マサキがやり返す


そんな2人の意地と根性の比べ合いが続き、千日手となり勝負がつかない状態へと突入する


・・・クソ!

ロンの奴、意固地になってマサキの有利な土俵で闘いやがって・・・!!


鬼の悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ、マサキの身体能力や怪力には、驚かされるが・・・


決して負けるような相手では、ない筈!


―――だが!

このまま勝負が長引けば龍人化が解けてしまう!!


そうなってしまえば一巻の終わり!

何とかして乗り切らないと・・・!!


・・・けど!

その肝心の方法や手段が思い付かない!!


残り時間は、もう1分を切っているのに!?


「―――2人共、動くなゲコ!コイツらの命がどうなっても良いゲロか?」

ジャクシが長い舌を伸ばし、疲弊しきったスミレとマチマサを捕縛して人質に取り、脅し始める


「マサキ隊長!すいません!!私らのことは、気にせず!刑を執行して下さい!!」

「僕らは、死ぬのも仕事だと思ってますから・・・でも死んだら特別手当てを出しといて下さい!!」

「・・・スミレ・・・マチマサ・・・!!」

ジャクシに捕まった恐怖を感じさせずに、陽気に振る舞う2人の姿に握る拳に力が入り、マサキがジャクシを睨み付ける


「その反抗的な眼は、何ゲロ?立場が解ってないゲコーー!!」

「「・・・・・・うっ!!」」

ジャクシの両手から分泌されたゼリー状の気持ち悪い卵を人質2人の背中へ植え付ける


「これで俺様が合図を出せば、卵は、孵化し毛穴から体内へと侵入し、激しい激痛が全身を襲い、2、3日もすれば成長した肉食おたまじゃくし達が身体の至る所から筋肉を喰い破り、痛みに耐えきれず死ぬゲコ!!」

「テメー!卑怯な手を使わず、直接、俺の所へ来いや!!」

「ゲ~ロゲロゲロ~!!その顔を見れて俺様は、大満足ゲコ!!」

激怒するマサキの姿を見てジャクシが嘲笑う


「『・・・・・・』」


―――オォォォーーイ!!


だから時間ねーって言ってんのに!

動くなとかバカじゃねーの!!


そんな時間は、もうねーんだよっ!!


・・・あの蛙野郎!

何て卑怯な手を使いやがる!!


これじゃ、本当に身動き取れないじゃないか・・・


「『龍の尾を踏み、逆鱗に触れた、蛙を許すと思うなよ・・・!!』」

「許すも許さないも少しでも動けば、2人は、死ぬゲコ?」

手も足も出せないチェンを挑発する


「『蛇に睨まれた蛙は、己の身に訪れる絶望的な恐怖から動けなくなるという・・・』」

「ゲ~ロゲロゲロ~!!そんなもん迷信ゲロ!!」


「『―――なら、生物の最上位に属する!我に睨まれた蛙は、どうなると思う?』」

「そんな眼で睨ん・・・でも・・・意味・・・な・・・!?」


・・・な、何が起きたゲロ?

・・・か、かか、身体が動かないゲコ!


「・・・っ・・・っ!・・・!!」


・・・こ、声も出ないゲロ!

それどころか呼吸も瞬きすらも出来ないゲコ!!


・・・どういう事ゲロ?

俺様は、奴を恐れているのか・・・!?


・・・ゲ、ゲロ?

心臓の鼓動まで止まって・・・いく・・・ゲ・・・コ!?


「「―――っ!!」」

スミレとマチマサの背中に植え付けられた卵が破裂しジャクシから解放される


「・・・部下に対する公務執行妨害だぁぁぁーーー!!」

「―――ゲコォォォーーー!!」

身動きが取れずに呼吸困難な状態のジャクシをマサキが殴り倒す


「「―――うわぁぁぁーーー!!」」

ジャクシを殴り倒した衝撃で地面が砕け、地割れが起こり大地が揺れ出してパニック状態になる


「『・・・興が冷めた!日を改めよう!!』」

混乱に乗じたチェンが簡辛ガンシンを救出し、空高く浮遊する


「今日のところは、見逃してやる!だが必ず俺が死刑執行してやる!!飯食ってる時も寝ている時も女抱いてる時だろうが気を抜かねーことだ!!」


・・・マサキのあの目!

本気で言ってやがる!!


いつでも寝首を掻くつもりだ!!


「『・・・そうか!・・・なら我もこれだけは、言わせて貰おう!!』」


・・・そうだ、ロン

俺らも一発、噛ましてやれ!!


「『童貞のコイツじゃ女抱いてる時は、ないから不可能だぞ!!』」


―――それ言わなくて良くない!?


みっともない捨て台詞を残して山奥へと飛び去って行く

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