第7話 ガサ入れ

「チェン、見るヨ!コイツら蝦蟇蛙盗賊団の残党ネ!!」

簡辛ガンシンが倒れた男達の身体にタトゥーが彫られているを発見する


「・・・何?この気持ち悪いタトゥーは!?」

「蝦蟇蛙盗賊団の手下には、服従の証としておたまじゃくしからカエルまでのタトゥーが彫られていて蛙に近ければ近い程、幹部アル!!」


・・・何その最高にダサい階級制度は!?


「コイツらのタトゥーは、おたまじゃくしに後ろ足が生えたレベルだから雑魚ザコヨ!・・・けど直ぐに仲間の蛙共が来るネ!!」

「そうと決まれば、ハゲオヤジから情報を聞き出して、さっさとおさらばするか・・・」


「「―――っ!!?」」

突然、照明が消え、店内が真っ暗闇になる


「・・・な、なんネ!?急に・・・?ワタシ今日、誕生日と違うヨ!!」

「・・・いや、これそういうサプライズ演出じゃないだろう!?」


『―――伏せろっ!人間ーー!!』

何かに気付いたロンの指示に従い、床にしゃがみ込む



―――ドッパパパパーーー!!!


「「―――ぎゃぁぁぁーー!!」」

四方八方から銃弾の雨霰が降り注ぎチェンと簡辛ガンシンが叫び声を上げる


「な、何ネ?この状況・・・!?」

「―――俺が知るか!!」

弾切れになるまで2人して身を潜める


「・・・・・・全軍撃ち方やめっ!!」

武装警羅隊ぶそうけいらたいです!全員動くのを止めて、大人しく投降しなさい!!」

腰に刀を差した眼鏡の男とタバコをくわえた隻腕の女性隊士が武装警羅隊を率いてやって来る


「・・・ぶ、武装警羅隊!・・・何で高級料理屋ここに!?」

「それよりもマズイヨ!あの2人は、一撃必殺いちげきひっさつコンビネ!!」


・・・い、一撃必殺いちげきひっさつコンビ?


―――何だ、それ!?


『異名を持つ奴に限って対したことないのが世の常だ!我に牙を剥いたことを後悔させてやる!!』


「―――ダメヨ!ココは、一度、退くネ!!」

「・・・えっ!一体どうしたんだよ?簡辛ガンシン!?」

突然、取り乱した簡辛ガンシンがこの場から逃げるように促す


飄々としている簡辛ガンシンがこんなに取り乱すなんて!?


・・・コイツらそんなにヤバイのか!!


「早くハゲから情報を・・・―――あっ!?」

『脳天直撃、即死だな・・・』

武装警羅隊が発砲した銃弾が直撃し亡くなっている


・・・な、なんてこった!

貴重な情報源が・・・


「追い詰めたぞ!蝦蟇蛙盗賊団!!よくも他の隊士達を!!」

「・・・フフッ!・・・マサキ隊長は、単身蝦蟇蛙盗賊団のアジトへ乗り込んだけど・・・標的ターゲットは、ここにいたね!!」

「マチマサ!マサキ隊長は、いないけど・・・私らで仕留めるよ!!」

「・・・ま、スミレもいるし楽勝かな?」

武装警羅隊のマチマサとスミレの男女コンビが店の出入り口を隊士達に封鎖させる


子供ガキ2人が粋がりやがって惨殺してやる!!』

「―――オイオイ!ロン!!年下相手に大人気おとなげないだろ!?」


「何ヘラヘラしてるアルか!あの2人組の恐ろしさがわからないアルか!?」

油断しているチェンへ忠告する


「・・・あれ?あの女、簡辛ガンシンだ!蝦蟇蛙盗賊団へ隠れみのを移したのか!?」

「どこまでも尻軽女だね!!」

マチマサとスミレが簡辛ガンシンの存在に気付く


「マズイネ!見つかったヨ!!」

「あれ、アイツら俺らのこと勘違いしてんじゃねーか?オイ、お前ら!俺らは、蝦蟇蛙盗賊団じゃねーぞ!!」

チェンが武装警羅隊へ間違いを指摘する


「そんな直ぐにバレる嘘を・・・!!そこに転がっている仲間達が何よりの証拠でしょ!!」


「「・・・・・・あっ!?」」

スミレが先程、倒した男達のタトゥーを指差す


「・・・いや、コイツらは、違うんだよ!俺達も被害者で・・・」

「―――問答無用!生死は、問わない!!引っ捕らえろーーー!!」


「「「―――ウォォォーーー!!!」」」

スミレの命令に従い、隊士達が一斉に襲い掛かって来る


「・・・全く聞く耳なしネ!!」

「―――やばいやばいやばいやばい・・・!!」

『何を狼狽えている?こんな羽虫以下相手に!?』


「バカか!ロン!!今は、簡辛ガンシンもいるんだぞ!!もし、ケガしたり捕まったりしたら・・・」

『馬鹿は、貴様だ!見てみろアレを!!』


・・・えっ!!

な、何だ?あの動きは!?


「・・・クソ!のらりくらりと・・・―――がはっ!!」

「今だ!挟み撃ちに・・・―――ぐへっ!!」

武装警羅隊が簡辛ガンシン捕縛の為に次々と襲い掛かっていくが太極拳の型を取り、構える簡辛ガンシンが隊士達の攻撃を全て受け流し、カウンターで掌底を顎や水月みぞおち、人体の急所へ的確に打ち込んでいく


―――簡辛ガンシンって強かったのか!?


地の利も生かして華麗に躱しているし!!


「美と健康の為に始めた太極拳であそこまで強くなれるのか!?」


・・・俺も始めてみようかな?


『馬鹿言うな!アレは、一朝一夕で身に付けたもんじゃない!!毎日毎日、血の滲む過酷な修行を行った者の動きだ!!』


・・・えっ!ウソ!?

アイツってそんな努力家なの!?


『店であのメスの掌底を受けただろ?アレは、全力の一撃だった!我が憑いていなければ、貴様の首と胴体は、おさらばしてたぞ!!』


「・・・マ、マジで!?」


メスの下半身の筋肉を触った時に言ったろ!日頃の鍛練で身に付けた良いケツしてるって?』


・・・えっ!言ったけ?

お尻の感触しか覚えてない!!


「・・・でも、アレなら複数の敵相手でも大丈夫そうだな!」

戦闘中の簡辛ガンシンの立ち振る舞いに安堵する


「蝦蟇蛙盗賊団の分際でよそ見とは、余裕だな・・・!!」

「―――ぎゃぁぁぁーー!!・・・さ、刺された~!!」

刃物で腹を刺されたチェンが悲鳴を上げる


「・・・なっ!?・・・は、刃が折れただと・・・!!コイツの身体どうなってやがる?」

人を刺したのに刀が折れたことに隊士が仰天する


『他人の心配より自分のことを心配しろ!!』

「・・・だ、大丈夫だ!どこも血は、出てねー!!」

『―――貴様に言うてないわ!!』

自分の身体に傷が付いてないか確認し、無事を確めて安心する


「怯むな!遠距離部隊、一斉に狙撃しろ!!」

合図に合わせてチェン目掛けて銃を発砲する


「―――うわぁぁぁーー!!・・・う、撃たれた~!!」

全弾全て命中したチェンが喚き声を上げる


『騒ぐな!鬱陶しい!!我の鱗に鉄の塊が効く訳ないだろ?』


・・・いや

そりゃあ、さ~・・・


長い間、一緒に旅をしてロンの強さや頑丈さは、身に染みてわかっているつもりだ!


―――だけど!!


自分の意思とは、関係なく守ってくれるから、俺自身は、本気で殺されたとか致命傷を負ったと感じてしまうんだよ!!


いつも無傷でいられるのは、ありがたいが・・・


―――この感覚を共有できる奴なんかいないだろうな!


もし、いたら握手を交わしたい!!


「―――隙あり~!!」

チェンの背後から刀を振り降ろして来る


「・・・な、何故だ?・・・どうして見向きもせずに刀を受け止めれた!?」

『簡単だ!コイツには、我の眼が憑いてるからな!死角などない!!』


「なにぃぃぃーー!!・・・ど、どういう事だ!業物の刀を野菜を切るかのように細切れに!?」

受け止めた刀を爪で綺麗に切り裂く


『我の爪の方が鋭いだけだ!!』

「―――オイ、ロン!いつも言ってるだろ?これやる時は、一声掛けろって!指、千切れたと思うんだよ!!」


・・・やっぱ、俺

コイツの戦闘スタイル嫌なんだよな!


―――野蛮過ぎて!!


「・・・何ネ!そのビビりっぷりは!?あの時とは、えらい違いネ!!」

『あの時は、龍人化モードに入ってたからな・・・!!』


・・・モード?


「余計なこと言うんじゃねーよ!ロン!!」

『あぁ~?人間の分際で何様のつもりだ!!』

再び、チェンがロンと言い争いを始める


「・・・はぁ~・・・この奇妙な光景にも見慣れてきたヨ・・・!!」

簡辛ガンシンが呆れて大きなタメ息を漏らす


「・・・フフッ!・・・折角、部下達に手柄を上げるチャンスをやったのに!!」

「マチマサ!ここからは、私らで行くよ!!」

スミレとマチマサが戦闘体勢へと入る

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