第72話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(31)


 その途端、周囲の光景が一瞬、ぐにゃりと曲がる。

 本能的に、ヤバいと感じた。

 同時に異変に気付く。

 周囲にあるすべてが・・・動かなくなって固まっている!

 往来の人も、バイクも、クルマも。

 なにもかも。

 動くものが無い世界。


 モノのみならず・・・光や音ですら止まった世界。

 いや時間さえ。


 おい!

 なんだこれ。


 ただ、視界の隅に入ったクレオとセクメトナーメンは、既に聖槍を手にして身構えている。


 動けている!


 一瞬で戦闘態勢をとっているのを見て、俺はちょっとだけ安堵した。

 彼女たちは大丈夫っぽい。

 ・・・それにしても、これはいったい。


 ガッ!

 いきなり腕を掴まれた!

 冷たいし、ぬめっとしていて、気色悪い!

 思わず手を引っ込めようとしたが、もの凄い力で引っ張られる!


 引っ張られる先には、修道僧のような例の黒フード男が!

 いつの間に・・・まったく気がつかなかったぞ!

 イルミナティ!


「ハチ! 頭を下げろ!」

 耳に刺さるクレオの指示。

 聞くや否や、俺は瞬間頭を下げる。

 直後、頭上ほんの一センチを、凄まじい突風が剣のように空気を切り裂く。

 クレオの聖槍だ。

 ふっと腕を引かれる力が消える、俺の腕に黒フード男の腕がぶら下がっている。

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