初陣戦

 クラスメイト達の攻撃が始まる。


 東門の前より、勇者部隊の後衛メンバーによる魔法攻撃は敵部隊正面に向かって放たれる。


 火に水、風に土と様々な属性の攻撃魔法。


 魔法攻撃によりじりじりと戦力をそがれ始める敵部隊。


 それにより生まれる混乱。


「いまだ!」


 日向の掛声で、前衛メンバーが敵に向かって突撃していく。


「敵軍捕捉、攻撃態勢準備」


「!!」


 先ほど後衛メンバーの魔法を受けて倒れたと思われた敵軍前衛の者達が立ち上がり進軍を再開。


 その体に使ている防具には殆どダメージがない。


 さすがにこのまま突っ込むのはまずいと思ったのだが、


「敵軍は弱っている、今がチャンスだ!」


 日向の指示に変更はない。


 それに、俺が口を出した所で聞く耳をもつはずもない。


 俺は、敵部隊へと突っ込んでいく味方に合流。


 一緒に突っ込んでいく。


「攻撃開始! 魔術部隊放ってー!」


 敵軍より放たれる魔法は俺達目掛けて飛んでくる。


 その威力は俺目掛けて放たれた物より上。


 前衛メンバーは約二十人程。


 全員を守り抜くのは少し厳しい。


 などと俺が考えを巡らせていると、


「そんなこけおどし魔法など我々勇者には通用せん! 足を止めずにすすめー!」


 勇者と言うステータスをどれほどの物と勘違いしてるのかは分からないが、敵の力も計れないで適当な支持を出す日向。


 それに対して俺は、


「っち! めんどくさいことになりあがった」


 自分の身を守るだけなら正直なところ何の力を使わずに避けるだけで済む。


 但し、それは他のクラスメイト達を見捨てることになる。


 それはさすがにできない。

 

 そなうなると、やることは一つ。


『ウェントシールド』


 俺は頭上に気づかれない程度の風のシールドを張る。


 そのうえで、そのさらに上に風魔法を使い俺達のいる場所に命中しないように攻撃をそらす。


「やはり、こけおどしか」


 魔法がそれていくのを見てより調子に乗り始める日向。


 少し失敗したかと思ってしまった。


 そして、俺達の前衛部隊と敵国の前衛部隊が衝突する。


 俺達勇者側の前衛部隊は、敵の攻撃を何とかしのいでいるものの防戦一方。


 何とか対抗できているの日向と月影くらいでそれ以外の者は今にもやられそうであった。


 俺は、攻撃を全て躱しながら全体の状況を把握。


 自分の戦闘に集中していて俺のことに気づいていないのか何も言ってこない。


「さすがにこの程度の相手になら通用するのか」


 俺は日向達Aランクの二人を見て冷静に分析。


 それよりも、他のメンバーがやばい。


「終わりだ!」


 一人のクラスメイトが完全に押されており、敵の一人の剣が頭上より振り下ろされる。


 それを、


 キーン!


 俺が受け止めて止める。


「大丈夫ですか?」


「助かったよ音無」


 素直にお礼を言われると少し照れるが今はそんな場合でもない。


「少しそこでおとなしくしておいてください」


 それだけ言って、正面の敵の方を向く。


 決着は一瞬。


 俺は、地面を思いっきりとけって一瞬で敵と交差、その瞬間に敵の胴体を真っ二つに。


 その光景に背後で戦闘見ていたクラスメイトの男子は目を背けてその場で吐いてしまった。


「自分の身は自分で守ってください! それと、この世界で甘さは命取りになりますのでそのことはだけは頭に置いておいてください」


 それだけ言って、他に戦闘をしているクラスメイトの元へとダッシュで向かう。


 その間も、日向達は派手さはないが的確に敵部隊の数減らしている。


 一対一の戦闘なら余裕で勝てるのであろうがこれは戦争だ。


 このままいけば、体力切れでやられるのも時間の問題であろう。


 だが、今の段階であいつらを助けに行っても素直に言うことも聞いてくれないし、それどこら背中ら攻撃をしてきそうでもあったために離れて観察しておくことにした。


 すると、そこかに気を一瞬取られたのか敵の攻撃を防ぎきれずに一撃を受けて退いてしまう。


 そしてその隙をつかれて完全に間合いに入られ避けられないであろう攻撃が日向に襲い掛かろうとしている。


 俺はさすがにまずいと感じ、一瞬でその二人に間に入り込み剣で相手の剣を受け止める。


「きつそうですね」


 腰を落としている日向に対して声を掛ける。


「もやし君が何をしに来た!」


「助けにですよ。この舞台はもう限界です。早く撤退の指示を出してください」


「無理に決まっているだろう! それに、もうすぐ起死回生のチャンスが来る。俺達は勇者なんだからな。それに、お前みたいな落ちこぼれのDランクとは違うんだよ!」


「まだそんなことを言ってるのか、あきれてくるな」


 俺は素に戻ることに。


「もしも自分に力がありこの戦いの中にいる誰よりも強いと言えるなら、戦場全体の状況を見てみろ!」


「何をバカなこと言ってるんだ! そんな暇あるわけないだろう!」


「バカはお前だ! 部隊指揮を執る者が自分の戦闘だけに集中して周りを見れない、他に気を少しでも回せば敵の攻撃を受ける。そんなんで部隊をまとめられるわけないだろうが!」


 俺の言葉に対して言い返すことの出来ない日向。


 そして、俺が敵の攻撃を受け止めている間に戦場全体の状況を確認。


 日向の顔が真っ青に。


「分かったか」


 頭を一回縦に振る。


「なら撤退の指示を出せ! 後は俺達で何とかする」


「どうやってだよ」


「お前には関係ない。お前は全員に指示を出して早く東門まで戻れ! そこで戦いを見ているのはお前らの自由だ!」


「分かった」


「させるか!」


 俺と剣を交えている敵が一度下がり突進してくる。


「遅いよ」


 俺はその突進に合わせて剣を横なぎに一振り、首から上を斬り落とす。


「早く指示を出せ!」


「全員撤退! 東門まで全力で走れ!」


 その叫びに合わせて俺は敵部隊の全員に強い風を起こし味方の撤退を援護。


 それと同時に、アーカイブにある通信機能を使い、


「フィート、レナ、リナ! 全員前線で一あばれだ!」


 三人に指示を出す。

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