第50話幻影

もう、ダメだった。



優は、一人で事を終えた。



優は、音を抑え吐息を吐きながら、さっき朝霧にあんな風に髪を拭かれたのはもしかしたらわざとじゃ無いかなど少しも疑わず、ただよく我慢出来たなと自分を褒めてやりたかった。



部屋の戸は障子で鍵は掛けられず、朝霧が入って来ないか心配したがその様子は無く、禁じられた遊びをする子供の如く更に布団の奥に逃げ込む。



仕方無く再び、一人で始める。



けれど、ふっと浮かんだ昨晩の朝霧のが段々と優の頭の中を侵食していき

、まるですぐ背後に朝霧がいるかの様な錯覚をする。



ダメだ!



ダメだ!思い出したら!



なのに止められ無い。



まるで上から朝霧に操られている様な錯覚もする。



切ない。



苦しい…



もう…我慢出来ない!!!



だが、突然、掛け布団の上から誰かがおおい被さってきて優は驚く。



「あ、朝霧さん!」



優が慌てて横になったまま布団から顔を出すと、幻影で無く、本物の朝霧の顔が近くにあった。



ア然としていると、朝霧は、掛け布団の合間から優の下半身に向けて自分の手をやった。




「あっ、朝霧さん、もう、もう、しないと、やめてくれと言ったはずです!」



優は、荒い息をしつつうつ伏せになり、朝霧の手を下敷きにしてその動きを止めさせる。



「やはり、無理です、こんな、貴方を放っておくなんて!」



優の耳に、背上から朝霧が唇を付けて囁やいた。



そしてそこに、抑えようとして出来ないかの朝霧の熱い吐息が吹き込まれ、優は顎を上げピクピクと背筋を戦慄かせた。

















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