コロナ離婚(仮)

佐倉銀

第1話 はじめに


はじめに


この物語はフィクションである。

この物語はフィクションであるべきである。

何故なら、私の主観でしか書かれてないし、周りの人間、もしくは当事者の感情や言い分は全く入ってないからです。正直これからどうなるのか、何が判明するのかは不明。まだ離婚もしていないし、別居もしていない。全く持って今の段階、題名の通り、(仮)なのである。

そもそも、コロナ以前からなにかと離婚の危機はあったので、コロナ離婚というのもコロナに悪い気もしなくもないのだけれど、噴出したのがこのコロナ時期であったので、このままの題名で行こうと思う。

 現状を話すなら、受験を来年に控えた娘が一人、中一になろうとする息子が一人、ここから大体電車で30分程度の所で働いている夫が一人、そして、私、専業主婦が一人。

 四人家族のお話であります。



 私と夫は10数年前、オンラインゲームで知り合った。

 その頃はスマホもなく、ガラケーという言葉もなく、ケータイという言葉があるのみの時代だった。オンラインゲームというヤツは簡単に言うと何でも偽れる世界であり、勿論、女性キャラを動かしていたところで、50過ぎた初老の男性かもしれず、男性キャラを動かしていたところで実は幼女であったりする可能性もある世界。昔はとにかくその辺り緩く、パソコンさえあれば、オンラインゲームはどれぐらいでも可能な世界であった。

 そんな中で出会った。

 きっかけはたまたまで、本当に自分でもびっくりだった。

 ちょうど就職氷河期に引っかかった私は就職も出来ず、フリーター、実家に戻って、派遣で働くという毎日、いい加減それもどうかと思った頃に、30も手前、結婚もあきらめかけ、働いている洋菓子店で調理補助をしていて、このまま、資格でもとって、他で働くか、その洋菓子店が系列店でも出すなら、そこでフルで働かせてもらおうかな~ぐらいの状態だった。

 降ってわいたのか、夫である。

 20代前半、よもやまさか、そんな彼氏が30手前女にできると思いもしないだろう。

 私だって、思わなかったさ。

 一年ほど付き合った後、夫からの言葉で同棲、ただ、遠距離恋愛であったこともあり、洋菓子店を辞めて、夫の仕事場の近くにマンションを借りて、二人で三カ月ほど暮らしたころ、娘が出来た。そして、入籍、結婚、出産……したところで、息子が出来て、旦那の実家の近くへ家を買い、そちらへ移った。

 そこまではトントン拍子。

 同棲した時、パートでもいいから働くかと思ったこともあったのだけれど、何分、家事掃除は全部私であったし、右も左もわからない土地ではなかなか難しく、そして、条件は朝早いか、夜遅い仕事ばかりで無理だったのであるけれど、夫の語感からはニートを養っているような言い方であったのを覚えている。多分、その辺りで違和感を覚えて、とっとと実家に帰っていればよかったのである。そうすれば、ここまで面倒になることもなく、実家へ帰り、精神的な病で通院することもなかった。

 そうこうしているうちに子供が出来、仕事はできるわけもないので専業主婦。大きなおなかを抱えて、数年必死であった。とにかく2DKのマンションで二人の子供は難しいという考えと、家賃分でどう考えてもローン組んで、一戸建てに住んだほうがいいんじゃね?みたいなことを夫婦で考え、夫の実家の近くへ家を買った。これにしても、本来はもうちょっと都会の会社よりに買うコトにしようとしていたのだけれど、気が付けば、夫の実家の近くに手ごろなところを見つけてしまい、そこでいいかと夫に問うたところ、お前がいいならいいということなので、買った。(後から、夫がそういえば、もうちょっと都会よりに買う予定だったんじゃ?なことを言われたのを覚えている。もっと、早く言え。ハンコ押しちゃったよ)

 

 全力で死にに行くような赤子(赤子とはそういうものである。好奇心の塊でなんでも口に入れるし、危ないところに平気で行く)を抱え、家事掃除に私は頑張った方であると思う。けれど、やはり、それだけのことをすると疲れる。夫とのオンラインゲームの時間は減り、夫としてはそれは共通のものがなくなるということであり、不満があったのだろうと思う。けれど、授乳で4時間おきにおこされ、それが終わったかと思ったら、夜泣きで起こされ、酷いときは4時ぐらいに起きて、いらんことをする子供ら、毎日公園へ連れて行き、追いかけまわす日々……彼らに罪はなく、彼らを必死で面倒を見ようとすると、正直、オンラインゲームなんてしてる暇はないのである。むしろ、数十分でも寝たい。私は夫にオンラインゲームを引退すると告げた。子供らが寝ると、明日の家事の準備をした後、そのまま、ばったりと寝る。もしくは多少のストレス解消の文筆などをして寝る。おのずと、ゲームどころか、夫婦の営みも減るわけである。


 それでもまだ、私は世間もうらやむような幸せの中にいたように思う。

 カワイイ子供に、割と何でも言うことを聞いてくれる夫。

 有り余るほどではないけれど、専業主婦ができるほどの夫の収入。

時々家族でお出かけしたり、旅行へ行ったり、時々、私だけで旧友に遊びに行くこともさせてくれた。

 十分だと思っていた。

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