第6話 根も葉もあるが華が無い

「ああ、それ僕も聞きましたよ。」

鍛冶屋から戻った2人にさっき聞いた私の噂について話したところ、それはニールの耳にも入っていたらしい。

「生きているマンドラゴラは病と呪いを振りまくんだとかなんとか。失礼な話ですよまったく!」

自分のことのように憤ってくれるニールの気持ちがありがたい。

実際のところ、私も呪いは使うが無差別に撒き散らしている訳は無く、病気の人を診ることもあったが皆快方に向かっているので全くの嘘もいいところ。なのだが……

「マナさんに関係のあるキーワードを持ってきてるのが悪質ですよね。」

アイの言うとおりで、呪われているかのような不運に遭ったり、病気になったりは誰にでも起こりうる。そんな時、人は誰かのせいにしたがるものだ。そこに呪いや病気に関わっている私の名前が挙げられたら……「こいつのせいだ」としまう人が出てくる。

私は今、有名になってきている。名声が上がるというのは、良い反応と悪い反応のどちらも強く出てくるということだ。名前を聞いたことがあるという程度では、大多数の人間はどちらの反応も示さないが、それはちょっとしたきっかけで悪い反応が噴出する素地ができているということでもある。


「よし、じゃあとりあえず酒場で聞き込みから始めるか。」

グライドが言うと、アイとニールも立ち上がる。

それが唐突に思えて、この場で私だけがその意味を飲み込めていない。

「なにポカーンとしてんだよ、ケンカを売られてんだろ?だったらガツンと一発食らわしてやらねえと。」

グライドが私の背中を叩く。

「あ、うん。」

確かに、これは私が解決すべきことだと思う。

だから自分がこれからどう動くべきかを何パターンか考えていたのだが、仲間の助けを得て解決するという考えは今の今まで無かったのだ。

自分が一人で解決するか、風化するまで耐えるか……

考えてみればこの状況で彼らが協力しないなんて有り得ないのに、そういう発想を私がしていなかったのは……人間から排除されることをあんなに気に病んでいたのに、無意識に壁を作って距離をとろうとしていたのは私の方だったのだろうか?

なんだか恐ろしいものを突きつけられたようで、息が詰まる。


でも、私の前には手を差し伸べてくれている仲間達が居る。

私はその手を取って立ち上がる。


「みんな、今回は私のことで面倒かけちゃうみたいだけど……よろしく頼むね。」


「もちろん!マナさんだけの問題じゃないですからね。」

とニールが言う。仲間の問題は自分の問題でもあると自然に思っている、立派なリーダーだ。


「それに、友達のことを悪く言われるなんて許せないです。」

とアイも同調する。他人の不幸を見過ごせず、困っている人に手を差し伸べることができる優しい人だ。


「まあそういうことだ、気にすんなって。」

グライドがへらへら笑う。彼は昔からなんだかんだ私のことを気にかけてくれる。


大切な仲間達だと、改めて思う。

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