第4話 マンドラゴラと和解せよ
ニール達に連れられて、街を歩く。
行きかう人々の中には、稀にだが人間でない者も混ざっており、表面上は人間と変わらず生活しているようであった。どうやら私もトラブルさえ起こさなければ、この街で生きていくことはできそうだ。
やがて2人が拠点としている宿屋に到着する。
「ん、おかえり」
「ただいま、グライド。今日いい人と知り合ってね――」
ニールが私を紹介しようとしてくれるが、それ以前に私の目はその人物に釘付けになった。
ニールやアイより少し年上の青年と言った容貌、顔は美形と言っていいだろう。ただし、その肌は黒く硬い甲殻でできている。顔や間接部分は柔らかい皮になっていて伸縮するが、それ以外は鎧を着ているかのようだ。
――
道中で聞いてはいたが、彼もまた亜人だった。
だが私が驚いたのはそこではない。
「え、もしかして……マナ?」
「……グライド!何でここに!?」
◇
森の奥にあるマンドラゴラの集落で生まれ育った私だったが、人間として生きていた時の感性が強く残っていて、他のマンドラゴラとはあまり打ち解けることができずに孤立していた。
そんな折、森をフラフラしていた私が出会ったのが蜘蛛人間のグライドであった。
私達はすぐに仲良くなり、色々な話をした。人間の街のこと、冒険者の存在……
蜘蛛人間の集落はマンドラゴラよりは人間と交流があり、蜘蛛糸の素材は高級品として流通しているらしい。
しかしそのグライドとはだんだんと森の中で出会うことが少なくなり……唯一の拠り所を失った私は耐え切れずに森を飛び出してきた。だが、そのグライドが何故ここにいるのか?
「いや、悪かったって。ちょくちょく森には帰ってるんだけどさ、なかなか会えなくって。」
「ふーんだ、いいんですよ別に。街に住んでることも冒険者やってることも全部隠してたってわけですからねーっ!」
「別に隠してたってわけじゃ……本当に最近なんだよ冒険者を始めたのは。」
そんな私達のやりとりを見て、アイがクスクス笑う。
「お知り合いだったんですね、仲がよさそうで安心しました。亜人には敵対種族もあるって聞いていたので心配だったんですよ。」
確かにマンドラゴラにも、葉をかじる虫や根をかじるモグラなどの敵対種族は居るが、蜘蛛は肉食なのでその辺りの関係はフラットだ。
「それにマナさんのそういう姿を見られたのも嬉しいね。」
そう言ってニールも笑う。そりゃ2人には今日会ったばかりなので、色々と取り繕ってもいたけれど……まあ、仲間になるというなら早めに素の自分を見せるに越したことはないだろう。
「それじゃあ改めて、マナさんを我がパーティに迎え入れたいと思うけど、異存ないね?」
私も含め、その場の全員が頷く。
「僕がリーダーを務めてる、
「私はアイ。海と砂漠の向こうから来た
「俺は
そして3人が私を見る。
「私はマンドラゴラのマナ。毒と薬と呪術が使えます。みんなよろしく!」
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