第二章第50話 覚悟の全ツッパ五百連(1)
出張所ですべて換金し、何とか五百連分の金をかき集めることに成功した。
窓を通り抜けられるフラウが戻ってこないということは、きっとまだエレナの傍にいるに違いない。
フラウの応援なしにガチャを引くのは正直不安だが、ここは覚悟を決めるときだ。
いくら暴力ばかり振るってくるやつとはいえ、それでもエレナは幼馴染だ。もしこのまま助けに行かず、見殺しにしたら俺はきっと一生後悔すると思う。
俺一人で助けに行ったところで無理かもしれない。
だが、どうせ後悔するのならやらずに後悔するよりもやって後悔したほうがきっと遥かにマシなはずだ。
だから俺は! できる準備を全てして、たとえ一人ででもエレナを助けに行く!
そのためには今、ここで神引きをするのだ!
そうと決まればまずは今のステータスを振り返ってみよう。
────
ステータス:
HP:3/3
MP:0/16
スキル:
剣術:2
槍術:2
体術:1
弓術:1
杖術:1
水属性魔法:2
火属性魔法:1
風属性魔法:1
召喚術(フラウ):1
────
現状を考えると、すぐにエレナのような圧倒的な力を得ることは難しいだろう。そんな状況ではあるが、今引けるガチャのお得度を考えれば魔法使い型でのステータス強化がベストではないだろうか?
断魔装備があるのでできれば前衛としての力を強化したいが、たとえ魔法使い型であっても『MP強化(大)』は断魔の聖剣を使ううえでも役に立つ。
そのため、☆5で欲しいのは『MP強化(大)』だろう。断魔の聖剣のこともあるが、MP の上限が上がらなければ一人で迷宮に潜るのは難しいはずだ。そのため『MP強化(大)』はあと二つほど、そしてついでに『MGC強化(大)』も引けるとありがたい。
そこにプラスして『剣術』か『水属性魔法』が一つ、できれば二つ引けるとありがたい。
そうすればかなり戦えるようになるのではないだろうか?
今までの感じだと百連で☆5が一つくらいは出るような感覚がある。であれば、今回だけはこのレベルの神引きをしておきたい。
いや、するのだ!
その他にも☆4のステータス強化系は引けるだけ引いておきたい。
まあ、この辺りはいつもと変わらないかな。
こうして現状をしっかり分析した俺は、周りに誰もいない森の中へやってきた。そしてすぐさまガチャの画面を開いた。
今回ばかりは爆死するわけないいかない。
「さあ、行くぞ。やってやる!」
気合を入れた俺はガチャを引くボタンをタップした。いつも通り、妖精たちが宝箱を抱えて運んでくる。
木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、銅箱、銅箱、銀箱、木箱だ。
よし。最初の十連から銀箱があるのはアツいぞ!
馬の糞や腐った肉が出ても気にせず箱を開けていき、最初の銀箱のところまでやってきた。
「変われ!」
小さく叫んだが、残念ながら変わらない。
「くそっ。ダメか」
箱から出てきたのは『☆4 鉄の槍』だった。
「ちっ。ハズレか。クソッ」
俺はすぐさま次の十連を引いていく。爆死だった。
さらに次の十連を引いていく。また爆死だった。
すぐさま次の十連を引いていく。またまた爆死だった。
「くそっ。なかなか上手くいかないな」
そうぼやきつつも俺は次の十連を引いていく。やはり爆死だった。
そしてそのまま俺は爆死を続け、あっという間に百連が終わってしまった。
なんと、☆5は一つも引けなかったのだ。
まずい!
「やはり、俺はフラウの応援がなきゃ無理なのか!?」
俺はついそんな悪態をついてしまった。
フラウの応援と励ましもなしにガチャを引くと、恐ろしい勢いでメンタルを削られてしまうということがよく分かる。
あれだけの覚悟をして臨んだはずなのにたった百連爆死しただけでこんなにも弱気になってしまうとは。
やはり俺にはフラウの応援が必要なのだ。
それかエレナのビンタ……いや。やめよう。
エレナのことを考えると、今の俺はどうにも考えがまとまらなくなってしまう。
大体、ビンタされると☆5が出るなんてあるわけない。
……ないはずだ。たぶん。
それに、だ。もし仮にそうだったとしてもそのエレナは今、迷宮の奥深くに一人で取り残されているのだ。
そんなエレナに寄り添ってあげているであろうフラウのためにも、俺はこんなところで弱気になっていて良いはずなんてあるわけがない。
そうだ。情けないにも程があるじゃないか!
俺は自分の両頬をパンパンと軽くたたいて気合を入れ直す。
さあ、見てろよ!
再び画面をタップしようとしたとき、聞きなれた声が聞こえてきた。
『あー! やっと見つけたっ! ディーノったらこんなところで何やってるんだーっ!』
「え!? フラウ!? どうしてここに?」
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次回更新は通常通り、2021/05/14 (金) 21:00 を予定しております。
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