第22話動き出すっ! 壮大勘違い
「あれ。鳥羽くんだ」
ざわざわと落ち着かない教室の中を見回し、明らかに深雪たちの方を見たのにそのままふぃっと教室を離れて行った。
「何? 今の」
「だれかを探してたふう」
「ここにいないのは?」
『香絵』
深雪、夏美、愛梨は顔を見合わせる。
「香絵どこ?」
「うろうろ」
夏美の問いに深雪が天井を指す。
「行ってみようか?」
夏美がイタズラっぽく笑った。
今日は15日水曜日。なんかあたし、先週の水曜日もここをうろうろしてた気がする。
日曜日にリカコさんと本庁へ行った後、リカコさんとジュニアが何かを調べ始めているのは気が付いたんだけど、月曜日の定例会もその後も、これといった説明はない。
リカコさんは鑑識室、ジュニアは捜一のデータベースで何かを知ったんだろうなぁ。
長い廊下を折り返し、階段の手前で誰かが登って来る足音に、あたしは足を止めた。
「カエっ」
飛び出してきたイチがあたしを睨みつける。
「また、LINE見てないな?
不携帯の癖、どうにかしろ」
「ゴメン。
随分慌ただしいね。どうしたの?」
ピリピリしてるのが伝わってくる。
「さっきカイリから聞いたんだけど、リカコさんが朝から呼び出されてたらしくって。
警察庁の方で何かの動きがあったらしい。
ジュニアもさっきリカコさんに呼ばれて行った」
「警察庁?
何があったの?」
授業中に召集がかかるなんて。
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階段では、ゆっくりと上ってきた深雪達3人が息をひそめて聞き耳を立てていた。
「……。
何があったの?」
カエのけげんな声。
「俺たちのことがバレたらしい」
イチの声に3人が顔を見合わせる。
「えっ。
それって……。あたしたちどうなるんだろう」
カエの不安そうな声。
「そんな顔するな。
どうにかなるように動いてるんだから」
心なしかイチの声にカエを思いやる優しさが見える。
3人からは見えないが、スマホの振動にイチが通話ボタンをスライドした。
「カエ。とりあえず放課後寄っていけよ。
もしもし?」
先頭で話を聞いていた夏美が後ろを振り返り、下りるように促す。
階段の下、教室とは反対側の廊下の隅に固まって夏美が興奮気味に口を開く。
「何々? どういう事?」
「あの2人付き合ってるんじゃないの?
で、それを反対されてる。とか。
深雪知ってた?」
愛梨が視線を移す。
「知らないよ。
香絵、自分からあんまりそういう話ししないし」
「香絵のこと呼び捨てだったし、放課後寄っていけって。家に寄って行けってことだよねっ。」
夏美はどっぷりと、収まらない妄想に浸っている。
「香絵。不安そうだったね。
鳥羽くんのこと、きっとすごく好きなんだね。」
愛梨の悲しそうな声におかしな団結力が芽生え始めたらしい。
「盗み聞きだったからはっきり言ってあげられないけど、断然応援するっっ!」
ぐぐっと力を込めて夏美が断言する。
全く人の想像力とはなんたることか。
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