第95話 そっちじゃなくて
「これ、あげるよ」
「私、そんなの受け取れないわ」
常連の客にお酒を注いでいると、
彼は財布から取り出したお札を手渡してきた。
「どうか貰ってくれ。僕の気持ちなんだ」
「そんなこと言われても……」
こういうお客様もたまにいらっしゃる。
私がそんなに困ってるように見えるのかしら。
「僕は君のためを思って言ってるんだ」
「はぁ……」
「いくらあっても困らないからさ」
一応はもらったけど……どうせならお札のほうが欲しかったわね。
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