第35話 帰省

「もしもし、オレだけど」

「……ヒロシ?」

電話に出たお袋は、驚きのあまり絶句していた。

それも無理はない。

もう二度とかかってくることのない息子からの電話なんだから。

受話器を持つ手も震えてるだろう。


「そうだよヒロシだよ」

「そんな、本当にヒロシなの?あんた無事だったの?いまどこにいるの?もしかして……近くまで来てるの?」

矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。

よっぽど気が動転してるようだ。


「久しぶりにと思ってね、いま」


話の途中で電話は切られた。

相変わらずそそっかしい母親だ。

いつも中途半端なのは変わってない。

だからドアノブを回してお袋に言ってやった。


「母さん。最後までしっかり確認しないと」

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