第180話 ミスティ・オス・トラビアス
調子に乗って一国の王女を誘拐してしまった。最近うっかりが多い気がする。
ミスティ・オス・トラビアス。前国王の忘れ形見、第一王女、王位継承権第一位。年齢は二十歳。金髪、碧眼。身長は低い。
王城から城下町はおんぶしながら屋根を伝って逃げ、全速力で異端者の楽園に向かう。馬でも三日かかる道程を半日で踏破する。日々練度が上がる肉体強化魔法は常時掛かっている活性魔法と親和性が良く。ウルルスは疲れ知らずで走ることが出来る。多大なエネルギーを消費するので連続運用には大量の食べ物が必要だ。代用品として蒸留酒を飲むと次の日、エネルギー不足でぶっ倒れる。
「凄い、風になった気分だった‼」
「お姫様抱っこじゃこのスピードは出せないんだよ」
「おんぶの理由が分かった」
「家には家族が居るから、修道院もどきに送るね」
「ご家族に会ってみたいんだけど……」
「まあ、良いけど」
街中でおんぶは目立つので降ろした。家族がどんな反応をするか想像もつかない。
「ただいま」
「おかえりなさい、ご主人様。そちらの方は誰ですか?」
「この国のお姫様」
「は? 王女様を攫って来たんですか?」
「なんか隠し部屋で王様に監禁されてたから連れ出してきた」
「私と同じ立場だったんですね、それで感情移入してしまったと?」
「そんなとおころだ」
「不審者さんはこんな小さな子にご主人様呼びさせているのか……。変態だな」
「……。ティアは奴隷兼嫁だし。何も問題ないと思います」
「奴隷は結婚出来ないはず……。あぁ、だから異端者の楽園に居るのか」
「そういう事」
「ご主人様。不審者呼びされてるんですか?」
「本名教えて余計な混乱は避けたい」
「あぁ、なるほど」
「アナタの名前を聞くと私は混乱するの?」
「まぁ、混乱すると思うぞ?」
「ウルルス帰って来てたの?」
「師匠お帰りなさい」
臨月に入った二人もやって来て本名がバレると言う事態に陥る。
「もしかして、アナタの名前はウルルス・コル?」
「その通りだ」
「お父様を殺したと言う噂のあるウルルス・コルが何故私を助けたの?」
「成り行きだ。俺は依頼の無い殺しはあまりしない主義だ」
「あまりと言うことは依頼の無い殺しもするのよね?」
「まぁ、山賊とか無法者は依頼が無くても殺すかな」
「なるほど」
納得したようにうんうんと頷く。
「墓守さんにはなんと説明しましょう?」
「身分を隠せば問題ないだろ、ここにはやましい心の持ち主が多い事だし」
「一番やましい心を持っているのはご主人様の気がします」
「心外だな。やましい心なんて持って無いぞ」
「じゃあ、やらしい心ですか?」
「それは否定しない」
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