第59話 褒賞金

 山賊のアジトを探すのはやはり簡単だった。近くに水辺があり、雨風を凌げる場所など少ない。天然の洞窟に奴らは居た。体を洗っていないのか水辺から臭いを辿ったら容易に見つかった。

 奴らが敵襲に気付いたのはだいぶ人数が減ってからだった。見張りの首をへし折り、一人ずつ確実に潰していった。装備からして山賊というよりは騎士団崩れだ。何の理由が有ったか知らないが、騎士団の一団が山賊の真似事をしていた。

 これは騎士団の信用問題にも発展する。町長も相手が騎士団崩れと思っていたようで、木乃伊取りが木乃伊になる可能性もあるから新たな騎士団を要望できなかったのかもしれない。

 騎士団崩れの山賊を全員始末すると、奥に攫われた女性達がいた。もう少し遅かったら、自害していたかもしれない。彼女らに与えられ食事は、水と、同じ男として度し難いが精液のみだけだった。生きる為に彼女らは山賊どもの情欲を甘んじて受けるしかなかったのだ。

 助けにきたといっても警戒心が解ける事はなかった。同じ男として情けない話だ。食料を渡すと皆それに群がった。何日ぶりのまともな食事かは知らないが、ようやく落ち着いた彼女らの証言で。精液のみの生活を送っていた事を知ると、怒りが込み上げて来たものだ。もっと凄惨な死がこいつらには必要だったと思った。死体は獣のエサにしてしまおう。

 歩きやすい道を選んで彼女らを山から下ろし、比較的元気だった者を連れて町長宅を訪れた。

「山賊退治ご苦労だった」

 助けた女性の証言で山賊退治は立証された。後は褒賞金を貰って帰るつもりだったが、町長が山賊退治のあらましを知れたがったので出来るだけ正確に報告した。

「そ、そのような事が可能なのか……」

 だいぶ狼狽したようだが、褒賞金は貰えた。金貨十枚、山賊退治の難易度をを考えると少し貰いすぎな気もするが、ありがたく頂戴した。それと町長に一つ提案をした。

「ふむ、温泉で心の傷を癒すか、検討しておこう」

 渋るかと思ったが、検討する気はあるようだ。女性達の心のケアをしないと自殺者が出るかもしれないと釘を刺して置いた。

「君の名を聞いて置こう」

「レミントンだ」

 いつもの偽名を使った。ここで馬鹿正直に本名を伝えて、余計な被害を出すの勘弁だった。俺に掛かった賞金で遊んで暮らせる額になるので、欲をかいた町長の護衛まで殺す事になる。それは避けるべきだ。

 それに酒場の一角を早く直して欲しいという旨も伝えた。これは、ギルド再開を願った訳では無く、情報をくれた爺さんへの礼だ。

「あい、分かった」

「酒が飲めなくてみんなイライラしてるからな」

「山賊退治の祝いを町で行うことにする。これは決定事項だ」

「まあ、いいんじゃないか。それで」

 その祝いに主役として紹介させてもらうと言われたので辞退した。顔の割れた暗殺者ほど動きにくいモノはない。

「褒賞金だけで十分だ。俺はこれで帰るとするよ」

「レミントン君。今後もこの町に何らかの問題が起きたら助けてくれるかね?」

「まあ、額によるな」

「なるほど、対価は払う。今後ともよろしく頼む」

「分かった」

 そう言うと用意された酒も飲まずにその場を去った。自分で開ける酒は大丈夫だが、人から振る舞われる酒は警戒する様にしている。

「急ぎの用でもあるのかね?」

「時間は有限だ、みんな忘れがちだがな」

「そうだな、確かに」

 町長の館から何人か追ってる者居たが、曲がり角で一瞬で屋根に飛び上がるともう、俺を見失ったようだ。そのまま屋根を飛ぶこと繰り返し町を出た。

 

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