ぼくと海と夜

今は夜の9時だ。

そんな時間なのに家にはぼくと海しか居ない。

それは空の山にまた侵入者が出たからだ。

その侵入者を探しに海以外は家を出ている。

海が家に居るのはぼくを守る為だ。

空達は何も言わなかったけど前の時と同じ様な事にはならない様にしているんだろうなってぼくは何となく分かった。

(海お酒飲んでるけど空達が帰ってきたら怒られるんじゃないかな?)


「青天のその服やっぱり似合ってるな~!可愛い!流石、俺!」

「それより、空達に怒られるんじゃないか?そのお酒」

「え~!確かに怒られるだろうな。だが、俺は今酒を飲みたいから仕方ない」


そう言い切って海はお酒をまた飲み始めた。

ちなみに、海に褒められた今日の服は海が選んだ服で(つまり自分で自分を褒めてた)兎の柄が描いている柘榴色の着物を着ている。


「お酒って美味しいの?」

「ん~、、、俺にとっては旨いけど好きじゃない奴には不味いだろうな。青天は飲んだら駄目だからな?」

「うん、分かってる。けど、お酒だけはあんまり良くないだろうから何かおつまみ作ってくる」


そう言って台所に向かおうとしたら海が呼び止めてきた。


「何か作るなら俺も一緒に作るぜ?」

「一緒に作るの?」

「俺以外とは一緒に作ったんだろう?なら、俺も一緒に作るりたい!」

「、、、なら、一緒に作ろうか」

「おう!」


海と一緒におつまみを作る事になった。

海は家に居る時はいつもゴロゴロしていて陸に怒られてるけど、本当はみんなを見守っているんだ。

(だって、優しい顔をしながら家族を見てる。海はお父さんみたいだな。空はどちらかというとお母さんだし)


ぼくは少しワクワクしながら海と一緒に台所に向かった。




海視点



台所に着いた俺達は何があるか調べる為に冷蔵庫を開けて中を見た。


「あ、ウインナーがある。後、カボチャと枝豆、豆腐、、、餃子の皮?」

「何か良い物あったか?」

「うん。まずは枝豆とウインナーと豆腐は直ぐに出来るね」

「豆腐はそんままで良いし、ウインナーと枝豆も直ぐ出来るからな」

「枝豆とウインナーは茹でよう。豆腐も何か、、、あ、これで良いや」


青天は2つの鍋にお湯を入れて火にかけた。

そして、豆腐を皿に盛り冷蔵庫と棚の中から何かを取り出した。


「ん?梅干しとネギとワカメ?」

「うん、ワカメは水に入れて戻せば直ぐに出来るよ。まず、豆腐の上に種を取ってバラバラにした梅干しを乗せる」

「うん、それで?」

「戻したワカメにお酢と醤油と塩を結構たくさんまぶして混ぜてそれを豆腐の上に乗せる。最後に薄く切って水で洗ったネギを乗せれば出来上がり」

「お、旨そうだな」

「あ、お湯沸いたから、それぞれの鍋に枝豆とウインナーを入れて煮る。その間にウインナーのソースを作る」

「ケチャップで良いじゃん?」

「ぼくの好きな味のソースだから海にも知って欲しかったんだけど」

「え?青天の好きな味?なら、作ってくれる?俺食べてみたい」

「うん」


そうして青天が取り出してきたのがとんかつソースとケチャップと砂糖だった。

(青天の好きな味を食べるチャンスだからな、絶対に食べてみたい!)


「まず、ソースとケチャップを一対一で入れて砂糖はその四分の一くらいを入れる。これを混ぜれば出来上がり」

「へ~、どんな味なんだ?」

「少し舐めてみる?」

「おう、、、甘酸っぱくて旨い!俺もこれ好きだわ!」

「そうか、、、海もぼくの好きな味を好きか」

「おう、好きだ。これ旨い!」


青天は顔を綻ばせて(無表情だけどいつもより嬉しそう)いた。

(自分と同じ物を好きになったのがそんなに嬉しいのか、、、そうだよな~、青天は空の所に来るまでは、)


「ラップでくるんで、、、レンジに、、、」

「青天、何してんの?」

「カボチャをレンジでチンしようとしてる」

「何で?」


青天はカボチャをラップでくるんでレンジに入れながら説明した。


「カボチャとかは実はレンジでチンした方が早く柔らかくなるんだよ」

「へ~、そうなんだ、、、って違う!何でカボチャ?何か他にも作るの?」

「ああ、カボチャと餃子の皮があったし海も居るからぼくの好きな食べ物を作ろうかなって思ったんだ」

「青天の好きな食べ物?俺も一緒に作って良い?」

「海が居ないと困る所があるから頼む」

「良いよ、良いよ、兄さんに頼りなさい」

「、、、うん」


可愛いお返事をした青天の頭を撫でているとレンジが鳴った。


「、、、うん少し硬い、ちょうど良いくらいだな」

「で?そのカボチャをどうすんの?」

「まず、塩と醤油と胡椒を薄味になるくらいに入れてカボチャを潰しながら混ぜる」

「混ぜんのは俺がやってやるよ」

「うん」


俺が混ぜている間に青天は餃子の皮の袋を開けてボウルに水を入れていた。


「こんくらいで良いのか?」

「うん、ありがと。これを餃子の皮に包む」

「どうやって?」

「ぼくが一つやるから見てて?」


青天は指をボウルに入った水に入れてから餃子の皮の半分くらいの上の方に濡れた指で薄く水を付けてからスプーンでカボチャを掬って餃子の皮の真ん中に乗せてから綺麗にヒレ?を作った。


「おー、、、スゲーな」

「海は器用そうだから直ぐに出来ると思うよ?」

「そうか?ま、良いか。それじゃ、一緒に作るか」

「うん」


そうやって二人で作ってると青天が歌い出した。

(他の奴には聞いてたけど、本当に歌うんだな)


「ふふ~ん♪海と一緒に餃子、餃子~♪楽しい時間~♪」

「っ、、、。」


楽しそう(無表情だけど)に歌いながら餃子を作っていく。

(俺と一緒に作るの楽しいのかよ!かっわいい~!スッゲー可愛い!)


「出来たらどうすんの?」

「揚げる」

「このまま?」

「うん。これまま揚げる」

「なら、油を用意するか」

「ぼくの身長だと危ないから海が揚げてくれる?」

「あ~、確かに小さいもんな。分かった、俺が揚げるな」


油が温まったので作った餃子を油に入れて揚げていく。

揚げていると餃子がキツネ色(俺じゃない)になってきた。


「これもう上げて良い?」

「ん、、、うん、もう上げて良いよ」


美味しそうにカラッと揚がった餃子の油を切って皿に盛りつける。

俺が揚げてる間に青天は使った道具などを洗っていた。


「洗ってくれたのか?ありがとなー」

「うん。作ったのを向こうに運んで食べよう?」

「おう、そうだな」


俺は青天の頭を撫でた後、出来たおつまみをさっきまで酒を飲んでた所まで運ぶ。


「よっしゃ!食べるか、いただきます」

「いただきます」

「お、旨い!、、こっちも、、、こっちも、、全部うめぇ!」


枝豆は普通に旨かった。

豆腐はワカメと梅干しの酸っぱさが効いていてその後にくるネギの苦味が酸っぱ過ぎるのを防いでいて旨かった。

ウインナーは甘酸っぱいソースと相性がパツグンで凄く旨い。

そして餃子は、、、。


「お、外はパリパリして中はほっこりホクホクだな旨い!」

「ぼくは塩をつけて食べるのが好き。後、おやつにも良いんだ。カボチャの味付けに砂糖とかハチミツを入れて塩を少し入れると甘く出来るんだ」

「ほー、、、俺は甘いのも好きだから今度はそっちも食ってみてぇな」

「空に作ってもらえば良いよ。ぼくは自分で作った物より空の作った物の方が好き」

「俺はどっちの味も好きだけどな」

「、、、そうか、それは嬉しいな」


その後、青天はそれぞれ2、3個食べて満足したのか(相変わらずあまり食べない)俺の尻尾に埋もれて(青天は俺の尻尾が好きみたいだ)眠ってしまった。

(青天の過去を思うと少しでも笑って居る様な雰囲気があるだけでも良い事なんだろうな)


「酒と一緒に食べるとさらに旨いなこのつまみ」


俺達は青天が大怪我をして寝込んで居る時に空に青天の過去を聞いた。

青天が怖いと思う大人は人間の大学生くらいかららしい。

(つまり、初対面の時の俺達はアウトだったはずなんだが、空の家族だから普通の人よりは大丈夫だって言ってたが、、、その俺達でもあそこまで震えてたんだ他の大人はどんなに怖いか、、、守ってやりてぇな。いや、守ってやる!俺達の大事な妹だもんな!)



その後、帰ってきた空達は眠ってしまった青天を布団に寝かせた。

ちなみに俺は陸にしこたま起こられた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る