一人じゃないぼく達
あおい夜
一章 家族は一緒が良い
一人ボッチのぼくと一人になった烏天狗
その日、十歳のぼくと両親の親子三人で遊園地に行くはずだった。
“ガッシャーン!、ドンッ!ボンッ!”
『キャー!ギャー!うわぁ!』
『えーん、えーん、おかーさーん!』
『誰か!誰か!』
“ピーポー、ピーポー”
酷い事故だった。
ぼくの両親はその事故で即死だった。
ぼくは生きていたが全身を強く打っていて意識が朦朧だったけど、ぼくの事を見つけた奴らの会話は聞こえていた。
『お、このガキまだ生きてるみたいだぞ!親は、、、即死だな』
『ちょうど良い。このガキは実験用に連れて行く』
そうしてぼくはある実験のモルモットになった。
ぼくは幸い?な事にほとんど意識がなかったのでどんな事をされたのかは知らない。
ただ、たまに我慢出来ないかなりの痛みが走ったけど意識が元々あまりなかったので直ぐ気絶していた。
それと、意識が稀に戻る事がありそこで何をしているのかも何となく分かった。
何故分かったかというと、そこで実験している方の奴らの会話を聞いたからだ。
『ナンバー988、989も駄目だな、処分しよう』
『あー、またか。これだけやってんのに成功例は今の所三人だけか』
『残っているのは一桁のナンバー達と37、564、それといつも死んだように眠っていて意識が無いこの999だけだな』
『一桁台の奴らは成功例を三人も出してる。それに、他の六人も順調に適合していっている。これなら、一桁台の奴らは全員成功例になるかもな?』
『37、564は西洋のサンプルを使うんだよな?確か37は真相の吸血鬼、564は天使とセイレーンの遺伝子、血、入、、、、、』
『999は日本、で唯一、、の妖怪、遺、子や、、入、、る。確、その、怪、珍、、青、、と天、だ、、な、、、』
途中で意識が朦朧としてきたので何を言ってるのか分からなかったけど分かった事もある。
一つは多分、999はぼくの事だ。
もう一つは、たまに意識が戻ると何かの液体を点滴みたいに入れられていた事と、さっきの会話からするとモルモットのぼく達に人外の血などを入れているみたいだ。
次に意識が戻った時、体が浮いている様な感覚があった。
何が起こっているのか分からなかったので側に居た奴らの会話を聞いてみる事にした。
『しかし、999は本当に何の変化も無いな。意識が無いからか反応が全く無い』
『外見も来た時のままだしな』
『ああ、そういえば一桁台の奴らは全て成功例になったらしいぞ』
『それ聞いた。あと、37は最後の真相の吸血鬼の血で実験してたんだよな。こいつも成功しそうなんだよな?』
『ああ。それと564も確保するのが大変だった二つのモノで実験してるんだが、体より先に頭が可笑しくなって狂ったみたいだぜ?』
『うわー、マジかよ。メンドクセェ』
“ブーッ、ブーッ”
“エマージェンシー、エマージェンシー”
“ナンバー37、ナンバー564が暴れながら施設を破壊しています”
『な!マジかよ!』
『うわ!音が、、、』
“繰り返し、、、ナンバー、、、”
そこから意識が無くなり、少しすると珍しい事にまた意識が少しだけ戻った。
『あ!999だ!こんな所で眠ってたんだ』
『兄さん?どうしたの?』
『あのね、あのね、999がココに居るよ!』
『へ?本当だ。やっぱり眠って居るんだね。意識が無い子にまでこんな事するなんて本当に酷い奴ら!けど、施設はボクと兄さんが破壊したから怒る相手が居ないや』
『999はどうする?あの怖い人達のせいで傷だらけだよ?痛いよね?』
『うーん、、、999はココに置いて行こう?もう少ししたらココにこの子の怪我を治してくれる人達が来てくれるから大丈夫だよ。999少しの間辛いかも知れないけど我慢してね?兄さん、ボク達は早くココを離れないと捕まっちゃうよ?』
『そっか~、分かった。ボク達もう行くけど元気でね!999ボク達は君の事が大好きだよ。バイバイ』
次に意識が戻った時は普通の病院のベッドに寝ていた。
そこでぼくの事を診ていた医者達の会話を聞いた。
『今のところ何処にも異常は無いが、人体実験を受けていたみたいだ』
『けど、検査の結果は特に異常無しでしたよね?』
『だから気味が悪いんだ。何かの実験で使われていたはずなのに異常無しなんてあり得ないだろう?』
『そう言われると確かに気味が悪いですね』
『怪我はもう治したんだ。早く意識をとり戻して児童施設に行って欲しいものだ』
その時は意識は戻っていたが体が動いてくれなかったのだ。
ただ、次に意識が戻った時はちゃんと目が覚めて、かなり久しぶりだったけど体もちゃんと動いた。
そして、目覚めて直ぐに児童施設に送られた。
児童施設ではぼくの事を医者から聞いていたみたいで最初は同情的な感情で迎えられたが、そこで2、3年過ごすとだんだん気味悪がれ5年たった今は化け物を見るみたいにぼくを見る。
けど、仕方がないとぼくは思った。
最初はぼくも気づかなかったけど、年がたつにつれて自分の体の異常が分かった。
ぼくはもう十五歳になるのに十歳の子供時の姿から一切、姿が変わらず歳をとっていなかったのだ。
ある日の夕方、ぼくはいつも通り誰も居ない所で一人で過ごしていた。
児童施設に帰ってもみんなぼくを見て怯えるか嫌悪感を示すので迷惑をかけない為にギリギリまで帰らず一人で過ごす事にしていたのだ。
その日は虫の音も何も聞こえないほど静かだった。
ぼくも流石に静か過ぎると不思議に思った時だった。
かなり近くで鳥の羽ばたく音が聞こえた。
“バサッ”
『、、、?』
『、、、欲しい』
『誰?何が欲しいの?』
『、、、決めた。お前はオレのモノにする』
そう言われた時、かなり強い風が吹いたので反射的に目を閉じた。
そして、目を開けると誰かに抱かれて空を飛んでいた。
『、、、?』
『すまない。だが、オレはお前が欲しい。オレのモノにすると決めた。悪いがオレの住みかに来てもらうぞ』
『ぼくが欲しいの?』
『欲しい。お前を一目見てどうしても欲しくなった』
『、、、あなたは人じゃないんだよね?』
『ああ、オレは烏天狗だ。それと一応、神として崇められてもいる』
『ぼくも人じゃなくなったみたいなんだ。化け物みたいなぼくでも良いならあなたのモノになるよ?』
『化け物?何処がだ?お前は綺麗だ!オレがどうしても欲しくなるくらいにな』
化け物みたいなぼくを欲しいと綺麗だと言ってくれる黒い羽根の生えた綺麗な烏天狗に、ぼくは五年ぶりに嬉しい気持ちになった。
『ぼくを貰ってくれるなら嬉しいよ。ぼくは一人ボッチだから』
『お前、親は居ないのか?』
『死んだよ。ぼくには誰も居ない。いつも一人ボッチだ』
『なら、オレがお前の親になろう!』
『ぼくの親になってくれるの?』
『ああ。そうと決まれば早くオレの住みか、、、家に行こう。そこで色々な話をしよう』
『うん。よろしく』
『そうだ、お前の名前は?』
『、、、無いよ。前は合ったのかも知れないけど覚えて無いんだ。今、住んでいる所でも名前を付けて貰わなかったし』
ぼくは事故の時、色々な事を忘れてしまった。
親がぼくを愛してくれていた事と自分の歳とこの国の物の名前等の事は覚えているけど、他の事はほとんど覚えていないのだ。
『そうなのか。ならばオレが名前を付けてやろう』
『うん。お願い』
『ん?お前、目が青いんだな?オレとお揃いだな』
烏天狗が言う様にぼくと烏天狗の目の色は同じ青色だった。
ぼくもぼくの両親も純日本人だったけど、生まれつきぼくの目は青い。
ぼくの親だと思われる人物がぼくの目が青い理由を教えていた。
難しい話だったので良く覚えてないが、ぼくの様に青い目を持って生まれてくる日本人はアルビノの人達と同じ確率で生まれてくる事があるらしい。
色素遺伝子がどうとか言っていたけど、その遺伝子に何かが起きて黒い目が青い目に変わってしまうらしい。
『幼子、オレの家に着いたぞ』
烏天狗の家は立派で大きな日本家屋で山の奥深くにあった。
『ココは今日からお前の家にもなる所だ』
『ぼくの家』
『ああ、そうだ。そういえば、オレの名前を教えてなかったな』
『烏天狗の名前、、教えて欲しい』
『そうか!オレの名前は空(そら)だ。青空の空だぞ?』
『空』
『そうだ。あと、お前の名前も決めたぞ』
『ぼくの名前?』
『そう、お前の名前だ。お前の名前は、、、』
ぼくとぼくの父親である烏天狗の空との出会いは誘拐から始まったのだ。
あの出会いから一年たった。
ぼくは空に恩返しする為にある事をしようとしている。
それは、、、
「、、、ん、、い、ん!青天(せいてん)!」
「、、、そ、ら?」
「青天、お前うなされていたぞ?また嫌な夢でもみたのか?」
「うなされて?、、、ああ、ちょっと昔の夢を見ただけだから大丈夫だよ」
「昔の、、、。」
「空、大丈夫だよ。あの実験のおかげでぼくは空に会えたんだから」
ぼくは覚えている事を全て空に教えている。
あの変な施設でされた実験のせいで十歳から一切歳をとらない事も児童施設ではみんながぼくの事を化け物みたいに怖がっている事も話した。
その話をしたら空も昔の事を教えてくれた。
空は烏天狗達と一緒に住んでいた時にとある罪を擦り付けられた。
その擦り付けられた罪というのは、仲間達を人間に売ったというものだった。
烏天狗達やその周辺に住んでいたアヤカシ達はみんな、少し変わった生まれの空がその罪を犯したのだと信じて疑わなかった。
空がそんな罪を犯すわけが無い、そんな奴じゃないと言ってくれた者達もいてくれた。
空の事を信じてくれたのは、捨てられた空を育ててくれた兄の様な天狐、自分と同じ時に捨てられて天狐に拾われ一緒に育った双子の兄弟の様な鬼、幼子の時に親が亡くなり弱った時に空が拾い天狐達と育てた自分を兄の様に慕ってくれる弟みたいな狗神と猫又、の家族みたいな四人だけだった。
元々、烏天狗達は空の事を疎ましく思っていたが天狐に頼まれたので仕方なく仲間として扱っていたので、今回の罪で空の事を仲間として扱わなくて良いと思い、空が罪を犯したと一番信じて疑わなかった。
空の事を庇っていたのが一番力とカリスマ性があった天狐と強い事で知られる鬼とその二人に育てられた狗神と猫又だったので最初は言葉以外の暴力や嫌がらせ等は何もされなかった。
だが、その四人を慕うアヤカシ達が四人の悲しそうな顔を見てその原因が空だと思いアヤカシ達も空の事を嫌悪する様になった。
空の近くには四人の兄弟しか居なくなり、四人が居ない所で空に暴力を振るう様になった。
空はかなり強い力があったが優し過ぎるほど優しかったので何もせずにたえてしまったのだ。
どんどん状況は悪化していき遂には四人を足止めして空を一人にし暴力を振るう様になった。
四人が気づいた時には空は身体中至るところ全て怪我だらけで倒れていた。
あまりにも酷い仕打ちに怒った四人はそれぞれのアヤカシ達の長を集めて訴えた。
長達はその話を聞いて驚き最後には自分の一族達の仕打ちの酷さに怒り罰を与えた。
長達は空が罪の犯人では無い事を知っていたのだ。
それぞれのアヤカシ達の長達は空が罪人では無い事を話してから罪の無い空に悪質な暴力を振るった者達に厳しい罰を与えた。
空の四人の兄弟達はこれで前の様に戻り、また一緒に楽しく過ごせると思い空の所に向かった。
だが、四人を迎えたのは優しい空ではなく全てを拒絶する冷たい空だった。
四人が長達の所に向かった時、空は怪我のせいで高い熱が出て眠っていた。
空を心配した四人も一人だけでも残そうとしたが長達は集まる条件に四人全員で来る事を要求したので泣く泣く諦め直ぐに戻るからと空に伝えて家を出たのだ。
四人が出かけ空が一人になったのを見ていた烏天狗達が空の眠って居る部屋に押し掛けて来たのだ。
だが、部屋には結界が張られていて入れなかったので苛立った烏天狗達が空に口悪く言ってきたのだ。
『お前みたいな奴があの四人と一緒に居るとはおこがましい奴め!』
『やはり、お前みたいな者を我ら烏天狗の仲間にするで無かったは!』
『烏天狗のクセに青い目を持つ異端児が!』
『我ら烏天狗は黒い目しか持っていないというのに!』
『我らはお前みたいな汚く気味の悪い奴と同じ仲間などと思いたくも無かったのだ!』
烏天狗達は全て黒い目を持っているのだが、空は青い目を持っていたので気味悪がられたのだ。
そして、空が一番傷つき四人の家族を拒絶する事になった言葉を聞いてしまった。
『お前のせいで天狐様達の力が穢れてきたのだ!』
『そのせいで今日、長達に呼ばれているのだぞ!』
『貴様のせいで天狐様達の立場が危うくなっておるのだ!』
『お前さえ居なければあの四人のお方達は幸せだっただろうに!』
『貴様さえ居なければみんな幸せに暮らせて居たのだ!』
『お前のせいで、、』
『貴様が居なければ、、』
力が穢れているとか立場がとかは全て空を苦しめたい烏天狗達の嘘だった。
だが、空は自分のせいで四人の力が穢れ、立場が危うくなって居るとだんだん思うようになり、烏天狗達が立ち去る前、最後に言った言葉が頭に響いた。
『お前が全ての不幸を振り撒いているんだ!お前が誰かに関わるとそいつら全てが不幸になったんだ!』
『みんなの幸せを願うなら誰にも関わってくれるな!』
空は高い熱が出ている怪我だらけの体を起こし家を出る準備をし、帰って来た四人の家族に向かって言った。
『オレはお前らとはもう関わりたくない。家族の縁など切ってくれ。オレはココを出て行くから探してくれるな』
空は四人にそう言った後、飛んでずっと住んでいた思い出がつまった家を出て行った。
四人は始め何を言われたのか理解出来ず固まっていたが空が出て行ったのが分かり慌てた。
その後、空は気持ち悪い邪気な溜まり場だった山を綺麗にしてその山と周辺の神様になった。
その山には空以外は誰も住んで居らず時折、空の家族の四人が訪ねて来るが空は冷たく追い出していた。
空に聞いた話だと烏天狗達が言っていた事は嘘だともう分かっているみたいだ。
だけど、あの時のみんなが空に言っていた言葉と向けられた目が忘れられないらしく誰かの側に居る事が怖いのだと言っていた。
だから、家族達に言いたくない冷たい言葉をはき追い出してしまうのだと言っていた。
空はまたあの四人と昔みたいに暮らしたいみたいなのだ。
ぼくは恩返しの為に空と空の家族を昔みたいに暮らせる様にしたいと思うんだ。
「空、大好き」
「ああ、オレも大好きだぞ、青天」
大好きなぼくのたった一人の家族の空。
ぼくは空に幸せになって欲しいんだ。
(だから、待っててね。ぼくが昔みたいに空が家族と暮らせる様にするから)
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