最強の武器になれる美少女に選ばれた俺は異世界で何でも屋をやっちゃります!

加藤あきら

第1話『ナオシ=サカイとフェルト』

   1



 世界の始まりはヘーレジアにあり。


 へーレジアに授けられた『知識』により我らは発展を遂げた。


 おそらくヘーレジアがなければ、我らは洞窟に暮らし、石によって作られた道具を使い、原始的な生活から中々脱することはできなかっただろう。


 様々な科学技術や魔法技術はヘーレジアによって『知識』を授けられ、人へと宿る。


 この世のすべての『知識』はそこから始まり、人へ人へと伝えられるのだ。



 


 この世界の始まりを綴っている文章の最初の最初の部分がこれだ。


 あくまで伝承だし、そもそもヘーレジアがいったい何なのか、詳しいことは何も書かれていないため、おとぎ話の域を出ないものだと思っていた。


 でも、いま俺が住んでいるこの世界は不可思議なことで溢れていて、たまによく分からないものが出てくることがあるのを考えれば、あながち嘘じゃないのかもしれない。


 例えば……そう、彼女なんかがそうだ。


 事務所の奥からコーヒーを持ってきてくれた銀髪でゴスロリを着た女の子フェルトが、感情の篭っていない平坦な声で言う。



「ナオシさん、コーヒーです。どうぞ」


「ありがとな」



 俺には昔の記憶がない。もしかすると、俺もそのよく分からないものなのかもしれないが、今のところはちょっと体が丈夫なくらいの普通の男だと……思う。


 一番古い記憶は何もない荒野に佇んでいたところから。そう、今から二年ほど前のことだ。


 そのときの俺は自分が何者なのかも分からず、不安に駆られ、涙を流し、叫びながら歩みを進めた。


 分かっているのは堺直志さかいなおしという名前くらいで、どこで生まれて、どういう人生を歩んで、どういった人間になっていったのか。


 全然思い出すことができない。



――ここはいったいドコなんだ? これから俺はどうすればいい? 



 そんな自問に誰も答えてくれるわけもなく、孤独に襲われながら人のいる場所を求めた。


 そしてたどり着いたのがクリオタウンだった。


 遠い昔から魔法使いの拠点だったということもあり、歴史を感じるレンガ作りの家が立ち並び、観光スポットにもなっている街。


 そのクリオタウンの一角に佇む少しボロい二階建ての建物。その二階で俺が現在営む何でも屋の『ジェネシス』がある。



 そして従業員の一人が、この銀色にきらめくキレイな髪をしているフェルトという女の子。


 このフェルトという女の子は一人旅をしていた時に出会った。


 さっき彼女のことを良く分からないものと表現したのは彼女が持っている力にある。


 実はこの女の子、不思議な剣の姿になれる。そしてこの俺に凄まじい力を与えてくれるんだ。そりゃもう、万能と言えるくらいのな。


 フェルトはこの何でも屋『ジェネシス』の最初の仲間であり、俺の剣。


 まずは彼女と出会った話からでも話しますかね。

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