第19話 かかし
稲が沢山の実をつけ、
僕は雀になめられているんだ。僕は全然動かない。いや動けないから雀は僕の頭の上に止まったり、目の前でお米を食べたりする。完全に僕を怖がっている様子はない。
どうすれば良いか悩んでいると、田んぼの前に軽トラックが止まった。中からおじいさんが降りてくる。ここの田んぼのお百姓さんだ。
「今年は雀が多いな。米かなり食べられてるじゃないか」
お百姓さんの言葉に、僕はギクッとなった。役目を果たせていない僕は、ここから追い出されるかもしれない。そう思うと怖くてならなかった。
「まあこれが来たし。これからは大丈夫かな?」
するとお百姓さんは、軽トラックの荷台から何かを出してきた。赤い金属製の物だ。重たそうにおじいさんがそれを運び出す。僕から見て左奥の方へ入って行って、それを設置し始めた。
——あれは一体何なのだろう?
僕はおじいさんが設置している間、ずっと疑問が消えなかった。
「よし完成だ」
おじいさんが満足そうに軽トラックの方へ戻って行った。そして先ほど設置した赤い物を見ている。
その時、雀がやって来た。すると設置した赤い物から、パーンという大きな音が田舎中に響き渡った。雀が驚いて逃げていく。僕はそれを見て心底驚いた。
「これで今年は大丈夫だな。まあ、かかしは予備で置いとくか」
おじいさんは満足げに笑みを浮かべて、軽トラックに乗り込み、田んぼを後にした。
僕は予備軍に降格されたことが悔しかった。あんな後入りの物に負けたくない。僕は気を張って、今まで以上に雀の追い払いに専念した。
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